コラム

共和党バンスvs民主党ウォルズは、あまりに対照的な副大統領候補対決

2024年09月03日(火)17時04分
バンス

攻撃的な40歳のバンス(左)と穏健な60歳のウォルズ FROM LEFT: DREW HALLOWELL/GETTY IMAGES, JASON ARMONDーLOS ANGELES TIMES/GETTY IMAGES

<米大統領選の副大統領候補はともに中西部出身の白人男性だが、年齢や性格、経歴はかなり対照的だ。副大統領候補には「攻撃犬」と「バランサー」」という2つの役割があるが、共和党バンス、民主党ウォルズのどちらが「攻撃犬」で、どちらが「バランサー」なのか>

米民主・共和両党の副大統領候補同士の対決は、民主党のティム・ウォルズ・ミネソタ州知事が共和党のJ・D・バンス上院議員を一歩リードした格好だ。これまでのところ、候補者たち自身よりもそれぞれ「猫好き女」発言やドーナツショップでのやりとり、雨どいの手入れのほうが話題を集めているが、バンスが大半の有権者に与えた印象は、社交下手で不気味な全体主義者・性差別主義者というもの。一方、ウォルズは陽気で温かみのある常識人と受け止められた。

歴史的に見て、米大統領選における副大統領候補の主な役割は2つある。1つは「攻撃犬」。副大統領候補が相手陣営への攻撃役に徹することで、大統領候補は政策に集中し、肯定的なイメージを保ち、政治の汚い部分から距離を置くことができる。もう1つは「バランサー」の役割だ。大統領候補と異なる地域(できれば選挙上重要な地域)出身で、異なるイデオロギーの持ち主であることが望ましい。


バンスは毒のある言動で前者の役割を果たす。民主党の女性たちは「惨めな人生を送る子供のいない猫好き女性の集団」であり、ハリスは「筋金入りの過激派」「根本的に偽物の人物だ」などなど。

地域的にはトランプ前大統領への貢献度は大きくない。バンスはオハイオ州選出の上院議員で、同州はもともと共和党が強い地域。トランプもバンスも権威主義的で無節操な保守派ポピュリストなので、イデオロギー面でバランサーの役割も果たさない。

これに対してウォルズは副大統領候補の伝統的条件を満たしているように見える。さらに、明るく「喜びにあふれた」選挙運動を展開する一方で、対立候補を笑顔で切りまくる。「私たちは州内の全ての子供が毎日朝食と昼食を食べられるようにした。他の(共和党知事の)州が学校から本を追放している間に、飢餓を追放したのだ」と。

バンスが選挙戦に加えたのは、まだ40歳という若さだ。現職のバイデン大統領が撤退した今、来年6月に79歳になるトランプは史上最高齢の米大統領候補となる。

トランプがバンスを起用したのは、アメリカの民族的多様性とエリート支配に反対するポピュリスト的・権威主義的運動を強化するためだろう。バンスは怒れる白人男性の代弁者になろうとしたが、他のほとんどのアメリカ人を激怒させる結果を招いた。現状では史上最も不人気な副大統領候補だ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国の尹政権、補正予算を来年初めに検討 消費・成長

ビジネス

トランプ氏の関税・減税政策、評価は詳細判明後=IM

ビジネス

中国アリババ、国内外EC事業を単一部門に統合 競争

ビジネス

嶋田元経産次官、ラピダスの特別参与就任は事実=武藤
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story