コラム

バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」「違法銃購入」疑惑は何がどれだけ本当にヤバいのか?

2024年06月11日(火)14時43分
バイデン

共和党はハンター(左)とバイデン(中央)を攻め立てるが…… JULIA NIKHINSONーPOOLーABACAPRESSーREUTERS15 NEWSWEEK

<バイデン次男ハンターの違法な銃購入・所持の裁判が始まった。「疑惑のデパート」と思われがちな放蕩息子だが、実は大統領選への影響はほとんどない>

バイデン大統領の次男ハンター・バイデンが銃の不正購入・所持の罪で起訴されている裁判の公判が始まった。これまで5年間にわたりバイデンに腐敗政治家のレッテルを張ろうとしてきた共和党にとっては、好都合なニュースに思えるかもしれない。

実際、ハンターが有罪であることはほぼ間違いない。しかし、この放蕩息子のトラブルにより、有権者のバイデンに対する見方が変わることはなさそうだ。

バイデンがオバマ政権の副大統領だった2014年、ハンターはブリスマ社というウクライナのガス会社の取締役に就任した。同社は米政府から汚職を指摘されていて、ハンターには現職米副大統領の息子であることを別にすれば特筆すべき経歴や資質はなかった。この時期、ロシアがクリミア半島を併合し、米政府はバイデンの主導でウクライナ国内の汚職撲滅を目指すと同時に、ロシアがこれ以上ウクライナに介入しないよう牽制していた。

米共和党、ロシアの情報機関、米司法省は、ハンターがウクライナ企業の取締役に就任したこと、そしてコカイン常用者だったことを把握していた。18年には、司法省が脱税とマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いでハンターへの捜査を開始した。

19年7月、トランプ大統領(当時)は、ウクライナのゼレンスキー大統領に圧力をかけて、バイデン父子の汚職について捜査させようとした(実際には汚職の事実はないのだが)。この時点で、翌年の米大統領選では、トランプとバイデンが対決する可能性が高まっていた。トランプはこの一件をめぐる行動を理由に、(1度目の)大統領弾劾裁判にかけられることになった。

19年12月には、トランプの顧問弁護士だった元ニューヨーク市長のルディ・ジュリアーニがウクライナを訪ね、バイデン父子の汚職をめぐる情報を入手しようとした。このときジュリアーニにお望みどおりの「情報」を提供したウクライナ側の面々は、ロシアの情報機関とつながりがあるとされている人たちだった。最大の情報提供者は、ロシア情報機関に雇われて活動していたとして刑事訴追されている。

バイデン父子のウクライナでの「汚職」に関する共和党の主張は、事実を完全にねじ曲げ、ロシアの情報機関が拡散させようとしていたニセ情報──バイデンの評判に泥を塗り、米大統領選でトランプを後押しすることを意図していた──をいわばオウム返しに繰り返すものだったのだ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story