最新記事

変異種

新型コロナ変異体は大人も子どもも区別しない

New COVID Strain in U.K. May Be Better at Infecting Children, Experts Say

2020年12月23日(水)16時00分
カシュミラ・ガンダー

マスクをつけたイギリスの子供。子供の感染は比較的少なかったが、今後は油断できない。Lee Smith-REUTERS

<イギリスで蔓延する新型コロナの変異種は子供や若者にも感染しやすく、感染拡大に拍車をかける恐れがある>

新型コロナウイルスの新しい変異種の登場で、従来のウイルスでは感染率が低かった子供にも感染が広がるおそれがある、とイギリスを代表する研究者らは考えている。

VUI-202012/01と名付けられたこの変異種は、現在までのデータによれば従来のウイルスより感染力が強いとされている。ただし、これまで以上に発症率や死亡率が高いとは見られていない。

この変異体は今年9月にイギリスで発見されたもの。開発された新型コロナウイルス向けのワクチンの有効性には影響を与えないという見解が一般的で、ワクチンを開発製造するモデルナとファイザーは、それを証明するために試験を実施している。

英政府の諮問機関である「新型呼吸器系ウイルス脅威諮問グループ((Nervtag)」は、21日に記者会見を行い、記者との質疑応答で、この変異種が他の株に比べて、子供に対する感染力が強い可能性があることを明らかにした。

これまでのところ子供やティーンエイジャーは、大人ほど新型コロナウイルスの深刻な被害を受けていない。子供も感染し、他人に感染させることはあるが、発症したり、死亡したりする可能性は低いことがわかっている。その理由は、子供の場合、ウイルスが体内に侵入する経路となるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という受容体の発現量が大人より少ないからだと専門家は考えている。

感染者の年齢層が変化

Nervtagに所属するインペリアル・カレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授は、現在入手できるデータに、変異体は従来のウイルスより子供への感染力が強い可能性を物語る「ヒント」があると述べた。

11月5日から12月2日にかけてのイギリス全体がロックダウン(都市封鎖)されたが、その間に感染者の年齢層が変化し、年少者の割合が多くなった、とファーガソンは指摘。この時点で、感染源となるウイルスには変異体とそれ以外の「非変異体」ウイルスの両方が含まれていた。

ファーガソンによれば、この変化は想定内だった。ロックダウンによって大人同士の接触は減っても、学校は閉鎖されず、子供同士の接触は禁止されていなかった。政府のロックダウン措置で閉鎖の対象となったのは、パブ、レストラン、必需品以外の商店、エンターテイメントやレジャーの会場、理容、美容院などだった。

5~6週間にわたる感染者のデータに「一貫して」現れたのは、15歳未満の症例では、変異体による感染の割合が非変異体ウイルスよりも「統計的に有意に高い」ということだった、とファーガソンは述べた。

インペリアル・カレッジ・ロンドンの感染症学科長で、Nervtagの会員でもあるウェンディ・バークレー教授は、「この変異体は、特に子供を攻撃するとか、子供への感染力が特に高いというわけではない」と、断言した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

OECD、世界経済見通し引き上げ 日本は今年0.5

ワールド

ロシア製造業PMI、4月は54.3 3カ月ぶり低水

ビジネス

午後3時のドルは155円半ば、早朝急落後も介入警戒

ビジネス

日経平均は小幅続落、連休前でポジション調整 底堅さ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中