最新記事

台湾総統選

中国、蔡英文が圧勝した台湾にさらなる圧力強化へ

2020年1月16日(木)09時07分

台湾総統選挙は、中国と距離を置こうとする現職の蔡英文氏(写真)が圧勝し、台湾に香港のような「一国二制度」を受け入れさせるという習近平・中国国家主席の目論見は頓挫を余儀なくされた。写真は8日、台北で撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

11日の台湾総統選挙は、中国と距離を置こうとする現職の蔡英文氏が圧勝し、台湾に香港のような「一国二制度」を受け入れさせるという習近平・中国国家主席の目論見は頓挫を余儀なくされた。しかし、習氏は台湾への圧力をむしろ強める公算が大きく、その意向を映して、中国国営メディアには既に強硬論が高まっている。

習氏は1年前の演説で台湾に一国二制度を同意させると宣言、それを受け、台湾総統選では中国とどう向き合うかが最大の争点となった。

習主席の発言に対し、蔡氏は習氏が即座に一国二制度を拒絶。その半年後には香港で大規模な反政府デモが発生し、中国が台湾の民主主義と自由を脅かす存在だという蔡氏の主張の大きな追い風になった。

しかし、中国指導部は、台湾に圧迫を加えるやり方が失敗だったとは認めず、総統選を受けて一段と一国二制度を押しつける姿勢を見せ、台湾政策は変えないと言い切った。

米戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、ジュード・ブランシェット氏は「習政権、もっと幅広く言うと中国共産党のDNAは、我が身を振り返って軌道修正し、和解や妥協など、自分たちの弱みと受け取られるようなシグナルを発することが得意ではない」と指摘。中国指導部内で目下、台湾締め付け強化を巡る話し合いが進んでいるのは間違いないと述べた。

具体的な圧力強化の選択肢には、これまで中国が使ってきた手段の多くが含まれる。つまり台湾周辺での軍事演習拡大、台湾がなお外交関係を維持している国(現在15カ国)のさらなる引きはがしのほか、中国と台湾が10年前に結んだ自由貿易協定の破棄などだ。

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は13日の論説で、軍事力行使が次の手になるかもしれないとの見方を示し、「軍事的圧力を用いることを含め、蔡氏の新たな挑発行動を抑え込む必要がある」と述べた。

すでに総統選前には中国の新型空母が台湾海峡を航行、蔡政権1期目には中国の爆撃機が定期的に台湾付近を飛行している。

清華大学の台湾専門家、Zheng Zhenqing氏は、軍事的な台湾圧迫を強めるのは現実的な手段だと強調。「中国本土にとって一国二制度は基本的な政策であり、台湾の一度の選挙でどうして変化するはずがあろうか」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、スカイダンスとの協議打ち切り観測 独

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中