最新記事

教育

英刑務所、受刑者にコーディング研修、再犯率の低下目指す

2019年3月18日(月)18時30分
松丸さとみ

2014年カリフォルニア、サン・クエンティン刑務所の様子 KPIX CBS SF Bay Area-YouTube

米の「再犯率ゼロ」プロジェクトがモデル

英国の刑務所で、受刑者にコーディング(プログラム言語に従いコードを書くこと)を教え、出所後の職探しに役立ててもらうプログラムが開始することになった。英国政府が3月15日に発表した。

英デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)は、120万ポンド(約1億7800万円)の基金「デジタル・スキルズ・イノベーション・ファンド」を立ち上げている。貧困層など社会的に弱い立場にいる人たちが仕事を得やすくなるよう、デジタル系のスキルの研修などを行うためのものだ。今回ここから10万ポンド(約1480万円)が、受刑者へのコーディング研修に当てられることになった。

プログラムでは、厳選した受刑者を対象に、出所後に職が見つけやすくなるようコーディングを教える。研修の実施は、非営利団体コード4000が行う。研修はこれまでもイングランド北東部のハンバー刑務所で試験的に行われてきたのだが、新たな資金提供を受けて、研修実施の対象がホーム・ハウス刑務所にも拡大されることになった。受講できる受刑者の数は1000人以上増えることになるという。

コード4000によると、刑務所でのコーディング研修は、米国で実際に行われている同様のプロジェクトをモデルにしたもの。米国ではザ・ラスト・マイルと呼ばれるプロジェクトが、カリフォルニア州のサンクエンティン刑務所で2010年に開始された。

ザ・ラスト・マイルによると、現在はカリフォルニアの他にインディアナ州、カンザス州、オクラホマ州にある全12施設でコーディングの研修を実施している。これまで460人にコーディングを教えてきたが、研修を受けた人たちの再犯率はゼロだという。なお、米国での平均的な再犯率は55%だ。

将来的には英刑務所でコーディング研修のネットワークを

コード4000が行うコースは4つのステージに分かれている。ステージ1はHTML、CSS、Javascriptなどの基本的なものから始まり、GitやTDD、MVC、データベース、フルスタック開発などを学ぶ。ステージ1を卒業できた人は、外部のクライアントを相手に本物の仕事を手がける。ここではわずかながら収入が得られ、この収入はプロジェクトの資金に還元されることになる。さらにステージ3になると、刑務所から日帰りで外出し、クライアントの元へ行って仕事をする。最後のステージ4は、デベロッパーとしてフルタイムの職を得ることを目指す。

前述の10万ポンドの資金は研修そのものの他に、英北東部シェフィールドに雇用拠点を新たに開設することにも使われる。この雇用拠点は、コーディング研修の受講生が出所した後にもサポートやアドバイスを提供したり、さらなる研修を行なったりしていく予定だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中