最新記事

朝鮮半島

南北会談、北朝鮮は非核化の対話拒否 米国「前向きな動き」と評価

2018年1月10日(水)09時43分

1月9日、米国務省は、平昌冬季五輪期間中の安全確保に向けた9日の南北高官級会談の開催を歓迎する考えを示した。2017年6月撮影(2018年 ロイター/Yuri Gripas)

韓国と北朝鮮の政府高官は9日、2015年12月以来となる正式な南北会談を行った。11時間に及んだ高官級会談の後に出した共同声明で、北朝鮮は来月の平昌冬季五輪に政府高官・選手団・応援団を派遣すると発表。

一方、朝鮮半島の非核化に向けた対話を行うとの韓国側の提案には「強い不満」を示した。

米国務省の報道官は会見で南北会談について「明らかに前向きな動き」と評価。「われわれは核に関する対話と朝鮮半島の非核化を望む。今回はそれに向けた幸先の良い一歩だ」と述べた。国務省は、非核化に向けた対話が行われる場合、米政府は対話への参加に関心があると明らかにした。

9日の会談では、韓国と北朝鮮は問題を解決し、偶発的な衝突を回避するため、再び会談を行うことで合意した。

ただ、北朝鮮は今後の南北会談で核兵器を議題に取り上げることを拒否。核兵器は米国だけを対象としており、「同胞」である韓国は対象外であるためと説明した。

北朝鮮首席代表の李善権祖国平和統一委員会委員長は「原爆や水爆、弾道ミサイルなどあらゆる兵器は米国だけを対象としており、われわれの同胞や中国、ロシアを対象としていない」とした上で、「(核兵器は)北と南の問題ではなく、これを議題に上げるなら負の結果を招き、きょう築いたすべての成果が無駄になる恐れがある」と語った。

ホワイトハウスはこの発言へのコメントを出していない。

一方、韓国統一省は、今回の南北会談は核問題の「根本的な解決」に向けた協議につながる可能性があると説明。「この過程で、米国、中国、日本や他の近隣諸国と緊密に連携していく」とした。また、北朝鮮側に緊張を高める行為をやめるよう求めたことも明らかにした。

国連のグテレス事務総長は9日、南北会談の進展を歓迎し、特に朝鮮半島の緊張緩和に向けた南北軍事協議の開催で両国が合意したことは「誤算のリスクを減らすのに重要だ」と述べた。また、北朝鮮が平昌冬季五輪への代表団派遣を表明したことを歓迎するとともに、朝鮮半島の非核化に向けた対話の再開を期待すると述べた。

国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は南北会談は「オリンピック精神にのっとった大きな一歩だ」と述べ、北朝鮮の参加に関する正式な提案を待つとした。

中国政府とロシア政府も南北会談を歓迎するコメントを発表した。

これとは別に、米国務省は9日、平昌冬季五輪期間中の安全確保に向けた南北会談の開催を歓迎するとともに、平昌五輪への北朝鮮の参加が国連の制裁決議に違反しないよう、韓国政府と協力していく考えを示した。

[ソウル/ワシントン 9日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米からの移民送還受け入れへ 米は制裁強化など

ワールド

トランプ氏、米防衛「アイアンドーム」構築求める大統

ワールド

中国AIアプリ「ディープシーク」にサイバー攻撃、新

ビジネス

25年の英成長率予想、0.9%に引き下げ=モルガン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」で記録された「生々しい攻防」の様子をウクライナ特殊作戦軍が公開
  • 4
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 5
    オーストラリアの砂浜に「謎の球体」が大量に流れ着…
  • 6
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 7
    不動産危機・中国の次のリスクはZ世代の節約志向...…
  • 8
    日本や韓国には「まだ」並ばない!...人口減少と超高…
  • 9
    関税合戦が始まった...移民送還を拒否したコロンビア…
  • 10
    「1日101人とただで行為」動画で大騒動の女性、アメ…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 9
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 10
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中