最新記事

アメリカ政治

トランプが企業を恫喝する「国境税」 本当にできる?

2017年1月11日(水)11時27分

1月9日、トランプ次期米大統領(写真)は最近のツイッターへの投稿で、米国向け製品を製造する海外工場を拡充すれば多額の国境税を課すといくつかの企業を威嚇したが、政策の詳細は明らかにしていない。写真はノースカロライナ州で昨年10月撮影(2017年 ロイター/Carlo Allegri)

 トランプ次期米大統領は最近のツイッターへの投稿で、米国向け製品を製造する海外工場を拡充すれば多額の国境税を課すといくつかの企業を威嚇したが、政策の詳細は明らかにしていない。

 トランプ氏の真意や採り得る課税強化策について探った。

Q:トランプ氏が米企業に対して独自の輸入税(import tax)を課すことは可能か。

A:できない。米国の憲法によれば税法を作成するのは議会であり、連邦政府の歳入の調達権限は主に下院に与えられている。

Q:トランプ氏が独自の輸入関税(tariff)を課すことは可能か。

A:できるだろう。ただし法的な面で困難に直面する公算が大きい。ニューヨーク大学ロースクールのダニエル・シャビロ教授は「特定の企業を標的にすれば、法的にも政策的にも懸念を掻き立てるのは必至」と指摘。企業ごとに選択的に関税を課せば、世界貿易機関(WTO)を通じて異議申し立てを受け、報復措置を受けるだろうと述べた。

 ブルックリン・ロースクールのレベッカ・カイサー教授も最近のニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、トランプ氏は大統領令で5─10%の輸入関税を課す考えを打ち出しているが、歳入調達の権限は議会にあり、こうした措置は憲法に反すると主張した。

Q:トランプ氏は、議会が取り上げている国境税への支持を示唆しているのか。

A:専門家の中には、トランプ氏の投稿は、下院共和党が提案した輸出促進のための国境における課税調整を支持しているとの見方がある。輸出による売り上げへの課税を免除する一方、輸入にまつわるコストの控除を禁止するこうした調整をめぐっては、米国への投資を押し上げると支持する声がある半面、議会の承認が得られるか疑問視する専門家もいる。

Q:トランプ氏の投稿は議会で浮上している国境での課税調整策と歩調がそろっているのか。

A:そうとは限らない。トランプ氏は雇用の海外流出を招いた米企業に懲罰的な課税を課す可能性に言及し、不安を煽った。一方、下院案は製造したのが国内企業か海外企業かに関係なく、すべての輸入品を平等に扱う内容となっている。

Q:トランプ氏の政策の詳細はいつ明らかになるのか。

A:トランプ氏がいつでも説明可能で、11日の記者会見で明らかになるかもしれない。専門家の間では、下院共和党は2月末に税制改革の素案を発表するとの見方がある。共和党がトランプ氏の政権移行チームと改革案について協議し、この日程がずれ込む可能性はある。

[ワシントン 9日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中