「国家崩壊」寸前、ベネズエラ国民を苦しめる社会主義の失敗
5. 「社会主義」とは、ベネズエラの惨状を伝える報道写真が象徴するように、衛生状態が最悪な手術室や壊れた保育器、血だまりの中で横たわって治療を待つ患者、抗生物質が手に入らないために命を落とす犠牲者など、国民を悲惨な結果へ導く精神的な毒を指す。
これに対し「民主社会主義」とは、社会の一握りが富を独占していると不公平を訴えることにより、富を富裕層から合法的に盗むことを指す。社会全体の貧困化させることによって格差是正が達成される。政府に権力を集中させ、民間企業や個人の権限を抑え込む。(5月16日付「ウォール・ストリート・ジャーナル」、ブレット・ステファンズのコラム)
6. 過去数十年間でベネズエラから国外へ逃れた医師の数は1万3000人に上ると推計される。医師不足解消の助け舟としてキューバ政府がベネズエラに医師を派遣したが、派遣されたキューバ人の医師たちは、ベネズエラからコロンビア経由でアメリカを目指す始末だ。だがそうなるのも無理はない。ベネズエラでは医師も診療報酬を減らされ、料理に使う油や食料品を購入するのもままならない状況なのだ。(4月26日付「リーズン」)
7. ベネズエラでは急激な物価上昇に対応するため貨幣を増刷しようにも、そのための紙代を支払う資金すらない。(4月27日付「ブルームバーグ」)
[参考記事]ベネズエラの新聞に紙不足の危機迫る
8. 食料不足で苦しむベネズエラでは、食料品店を狙った略奪が日常茶飯事だ。(ロイター/ビデオ)
9. ベネズエラは原油埋蔵量が世界一であるにも関わらず、政府が国民の生存に必要な食料や医薬品すら供給できない事態に陥っている。(CNN)
稼いだ外貨を使いきった指導者
10. ベネズエラの経済危機は、1990年代末から続くウゴ・チャベス前大統領とニコラス・マドゥロ現大統領による社会主義政権が掲げた約束がイリュージョンだったことを露呈している。
外貨収入の96%を原油に依存しているベネズエラでは、原油価格が高かった時代には、住宅環境や食料供給の改善、賃金上昇や福祉の充実によって国民も恩恵を感じることができた。
だがベネズエラ政府は持続可能な経済への構造転換に失敗した。せめて石油で潤った外貨収入を蓄えておけば2014年に始まった不況による影響を多少なりとも抑えられたであろうに、政権はそれすらばらまき政治に利用した。(5月17日付「ニューヨークタイムズ」社説、ベネズエラの経済危機の元凶は社会主義体制だと批判して)
──ニューヨークタイムズはさらに、ベネズエラの殺人発生率は一日当たり52.2人、約28分ごとに一人が殺害される計算だと指摘している。