インドにも「侵入」を繰り返す中国
実効支配地域の認識は食い違うが、現状維持では一致する矛盾を突く中国
及び腰 中国軍が国境を越えてきても黙認するインド政府には国内から反発も Adnan Abidi-Reuters
インドがパキスタンと67年に渡って領有権を争うカシミール地方をめぐって、中国との間でも緊張が高まっている。インド軍当局によると、中印間で領有権を争う東部ラダックに、中国軍が部隊を派遣したという。
インドの地元紙タイムズ・オブ・インディアによると、中国人民解放軍の部隊は、インド国境を越えてカシミール地方内部に25〜30キロ侵入した。現地時間の今週初め、インド側の警備兵が中国軍の兵士が高地に向かって進んでいるのを発見した。両軍の兵士は接触したが、中国軍の兵士は現地から撤退することを拒否。インド軍の兵士は、新たに設定された軍事規則に従って基地に戻り、そこで上官に報告したという。
ラダックは標高5200メートルを超える高地にある山岳部の辺境地帯で、インドと中国の兵士が昨年も3週間にわたるにらみ合いを続けたことがある。
インドの英字紙DNAは、インドの軍高官と広報官は両軍の間にいかなる衝突も起きていないと否定した、と報じている。両国の実効支配線(LAC)の定義があいまいなために混乱が起きているのだという。インドと中国は、お互いが主張するLACが食い違っていることは公式に認めているが、同時に現状を変えないことでも一致している。
それにも関わらず、両国はしばしば相手の「侵入」を非難し合っている。インド軍の広報官は、「それぞれが自国のLACの認識に従って警備するので『侵入』が発生する」と説明した。
今回、中国軍の「侵入」があったかどうかは議論が分かれるが、インドの政治家は国境警備の強化を主張している。「中国軍はラダックに25キロも侵入しているのに、インド政府は、中国軍は中国側の解釈によるLACまで警備に来ただけだと正当化している」と、インド野党・国民会議派のマニッシュ・テワリは政府を非難した。