最新記事

米兵

米兵銃乱射で流動化するアフガン情勢

4度目の派遣を嫌がっていた米兵は、法ではなく政治の力で極刑を言い渡される可能性もある

2012年3月16日(金)16時08分
タリア・ラルフ

たぎる怒り 事件後、反米デモを繰り広げたアフガニスタンの人々(3月13日) Parwiz Parwiz-Reuters

アフガニスタンで民間人16人を殺害した米兵の弁護士が決まった。はだしでセスナ機やモーターボートなどの窃盗を繰り返して話題になった「裸足盗賊」の弁護で知られる、ジョン・ヘンリー・ブラウン弁護士だ。

 容疑者の米兵(38)はワシントン州シアトル出身であるため、シアトルの法曹界で有名なブラウンに弁護を頼んだとみられる。

 事件が起きたのは11日の朝。米兵がカンダハル州で民家3軒に押し入り、非武装の住民に向けて銃を乱射。子供9人を含む16人が死亡したほか、負傷者も出た。米当局はいまだ死傷者数を正確に把握できていない。

 この米兵はまだ正式に起訴されていないが、レオン・パネッタ米国防長官は、死刑が求刑される可能性もあると指摘した。

 ブラウンは「裁判は法律より政治の問題になるだろう」と、ワシントン州タコマのニュース・トリビューン紙に語っている。アフガニスタン国民の怒りを収めようと政治的な圧力がかかり、容疑者にとって厳しい裁判になるとの見通しだ。

 米兵はワシントン州のルイス・マコード統合基地の所属。ブラウンがAP通信に語ったところによれば、今回を含めイラクとアフガニスタンへ計4回の派遣歴がある。イラク駐留では2度負傷しており、今回のアフガニスタン派遣には乗り気でなかったという。「彼はまた派遣されることを嫌がっていた。(前回帰還したとき)彼はもう戦地へ送られることはないと言われたのに、また行けと言われた」

 一方捜査当局は、アルコールや夫婦間の問題が彼の行動に影響を及ぼした可能性を調べている。

 アフガニスタンでは反米感情の高まりを背景に、反政府武装勢力タリバンがカタールでの米国との和平交渉打ち切りを宣言。カルザイ大統領も15日、米軍の治安権限の移譲を1年早い2013年末までに完了するよう要求するなど、情勢が一気に流動化しつつある。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国自動車輸出、4月は過去最高 国内販売は減少に減

ワールド

UNRWA本部、イスラエル住民の放火で閉鎖 事務局

ワールド

Xは豪州の法律無視できず、刃物事件動画訴訟で規制当

ビジネス

ドイツ住宅建設業者、半数が受注不足 値下げの動きも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 4

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 7

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中