3000人を看取った医師が教える「80歳以上が今すぐやるべきこと」
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<「多死社会」化する日本で、人生の最期をどう過ごすか、幸せな死を迎えるためにはどうすればいいか。愛和病院(長野県長野市)副院長で、緩和ケア医の平方眞氏は「人生の最期を考える話し合い」の重要性を指摘する>
現在、日本の年間死亡者数は約130万人で、なお増加傾向にある。2038年には死亡者数がピークを迎え、約170万人となる予想だ。ピークを過ぎても、その後の30年間は、毎年150万人以上の人が亡くなるとされている。日本は急速に「多死社会」に向かっている。
愛和病院(長野県長野市)副院長で、緩和ケア医として3000人以上の患者を看取ってきた平方眞氏によると、今の日本で亡くなる人の多くは、死亡診断書にはがんや肺炎で亡くなったと記載されていても、イメージとしては「老衰9割+がん1割」「老衰8割+肺炎2割」のような感じなのだという。
つまり、ほぼ老衰なのだ。そのため、ほとんどの人が十分生きたと思える年齢であり、その時に死が訪れるのは自然なことだと言える。
今後、病院以外で最期を迎える人が増え、介護施設や自宅などの生活の場での看取りが増えていくのは確実だ。
平方医師は「多死社会=不幸な社会」になってしまうことを懸念している。死を少しずつでも生活の中に取り戻し、死を「忌み嫌うべきこと」として避けることなく、よい死、望ましい死、幸せな死を増やすことができれば、多死社会が不幸な社会になることを防げるという。
そのためにも「人生の最期を考える話し合い」と「緩和ケア」はとても大切――そう考える平方医師は、『人生のしまい方――残された時間を、どう過ごすか』(CCCメディアハウス)を上梓した。
「人生の最終段階」でのさまざまな話し合いをケーススタディとして紹介しながら(ほとんどが実話だという)、人生の最期をどう過ごすか、周囲の人と共に考えることの大切さを訴える一冊だ。
家族が知らなかったエンディングノート
ここで、本書に掲載されているケーススタディを1つ紹介しよう。83歳の男性の事例だ。
男性は、体力と健康にはかなりの自信を持っており、「オレは医者になんか一度もかかったことがない」が口癖だった。しかし、風邪から肺炎を起こし、意識が朦朧とした状態で病院に搬送されてしまう。気管に管を入れ、人工呼吸をしないと助からない状況だという。
救急医から本人の意思を問われるが、家族は答えることができない。その結果、「できるだけのことをしてほしい」と答え、それに応じて救急医は、人工呼吸、心臓マッサージや電気ショック、強い薬を使って男性の命を助けた。
このとき、回復の見込みがない状態の男性に対して、家族は医師から3つの選択肢を示された。
(1)胃ろう、または経管栄養にする
(2)普通の点滴をする
(3)何もしない