最新記事

映画

日韓関係悪化でも日本の映画人が多数参加した釜山国際映画祭 新たな試み次々と

2019年10月18日(金)19時20分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

過去最悪の日韓関係といわれるなかでも、是枝裕和監督はじめ多くの日本の映画人が今年も釜山を訪れた。오마이뉴스 사진부 / YouTube

<日韓関係の悪化が喧伝されるなか、アジアを代表する国際映画祭が今年も韓国・釜山市で開催された>

今月3日から韓国釜山で開催されていた「第24回釜山国際映画祭」が、12日無事終了した。今年は映画祭イベントの場所の変更や、メイン会場周囲の歩行者天国化など新しい試みを取り入れるなど、新しい映画祭となっただけでなく、韓国映画100周年という記念年でもあった。映画祭はどのような成果を収めたのだろうか?

今年の総観客動員数は18万9116名と、残念ながら去年の19万5081名から6000名弱減少してしまった。要因としては、スターの招待が少なく、特に韓国の大物俳優の不在が目立ち観客の関心を引き付けられなかったことが大きいと言われている。また、釜山国際映画祭は世界未公開、韓国未公開映画にこだわる節があり、その結果、大衆ウケする商業映画よりもまだ未公開の中規模映画を上映作品に多く取り入れてしまったため、映画マニア以外の観客を逃してしまった。映画の編成は何よりもバランスが大事だと再確認できる結果となった。

このように一部不満の声も上がったものの、まだまだ折り返し地点だ。ここ数年なぜか映画祭の日程に合わせて韓国を直撃していた台風も心配されたが、開催日前日には無事過ぎ去り、新しく生まれ変わった釜山国際映画祭をアピールするのにはある程度成果があったように思える。先ほど、「未公開作品にこだわった」と紹介したが、今年は世界初公開が120作品(長編97本、短編23本)、韓国初公開作品30本(長編29本、短編1本)が上映されている。これほどの未公開作品を、世界もしくは国内で一番初めに上映できるのはやはり映画祭の力だろう。

映画祭と共に行われる映画の見本市「アジアフィルムマーケット」は、今年から映画だけでなくドラマなど多様なコンテンツも取引が行われるようになり、参加人数は去年から22%アップの2188名が参加。出展ブースは17%アップの200社が参加している。放送権では200万ドル規模の取引が成立し話題となり、ヨーロッパ圏への版権販売は歴代最大規模を記録した。韓国ドラマはまだまだ世界で人気なようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ南部、医療機関向け燃料あと3日で枯渇 WHOが

ワールド

米、対イスラエル弾薬供給一時停止 ラファ侵攻計画踏

ビジネス

米経済の減速必要、インフレ率2%回帰に向け=ボスト

ワールド

中国国家主席、セルビアと「共通の未来」 東欧と関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中