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中国の真実
建国60周年を迎える巨大国家の
変わりゆく実像
中国軍の脅威は水面下にあり
軍拡競争を誘発する中国海軍の増強が地域の経済発展を妨げる
中国が、東アジアのパワーバランスを変えつつある。アメリカとその同盟国が中東やアフガニスタンに注意を向けているうちに、しかも近隣諸国の抵抗をほとんど受けぬまま──。中国海軍が南シナ海に面した海南島の三亜に、大規模な原子力潜水艦基地を建設していたというニュースはいい例だ。
戦略的な要衝に位置するこの海軍基地では、潜水艦が地下施設から直接、南シナ海やインド洋に出撃できる。アジア諸国にとって生命線といえる海上交易ルートに、戦力の投入が可能だ。第二次大戦以来、この海域を管理してきたのはアメリカ海軍だった。アメリカとその同盟国が治安を維持し、アジア各国の驚異的な経済発展と繁栄を支えてきた。
アメリカと張り合う海軍力を築くことで、中国はアメリカの海域支配に異議を唱えているようにみえる。この動きが、アジア全体の平和と繁栄を脅かす可能性もある。
三亜の基地には多数の原子力潜水艦や駆逐艦、将来的には空母も停泊できる。ベトナムなど東南アジア諸国からわずか数百キロの距離だ。すでに弾道ミサイル搭載の最新鋭原子力潜水艦「晋級」の停泊が確認されている。
基地周辺の斜面に巨大なトンネルを造成していることが、事態をさらに複雑に。完成すれば、スパイ衛星からの監視を避け、アメリカに察知されずに潜水艦を展開できる。
「台湾独立阻止」以上の軍事力
軍事専門家によれば、この基地建設は中国の急速な軍事力増強(とくに海軍)の一環だ。各国が防衛費を削減し軍備を縮小していた95年以降、中国は30隻以上の新たな潜水艦を発注。中国海軍は、少なくとも5種類の異なった潜水艦を入手したか建造している。そんな軍隊は中国以外、どこにもない。
潜水艦に加え、駆逐艦も増強。90年代初頭から合わせて1000発以上の弾道ミサイルを配備し、最新鋭戦闘機を数百機も購入した。
専門家の多くは、中国の急速な軍備増強を台湾独立を阻止するためのものとみている。しかし中国は、台湾から重大な挑発は受けていない。それに台湾は過去10年間、ほとんど戦力を増強していない。つまりここ数年の中国は、台湾の独立を阻止する以上の軍事力をもっていることになる。
実際、両岸関係において、中国の要求をのむよう台湾に強制できる軍事力を中国がそなえているおそれがある。さらに、台湾に照準を合わせた新たな軍事力が別の目的に使われる可能性に近隣諸国は注目している。
現実の脅威にさらされていないなかで、軍備増強の真の目的は謎のままだ。非公式にではあるが、アメリカの国防当局者は不安を口にしている。米国防総省は、中国が2010年までに核弾頭つき弾道ミサイルを搭載した潜水艦5隻を配備できるようになると予測。中国の核戦力は一気に高まり、他国からの核攻撃を生き延びられるようになる。