Picture Power

世界報道写真コンテスト 大賞は「鼻と耳を削がれた女性」

2011 World Press Photo Contest

Photographs by

世界報道写真コンテスト 大賞は「鼻と耳を削がれた女性」

2011 World Press Photo Contest

Photographs by

大賞:ビビ・アイシャ(18)。夫の暴力のため婚家から逃れて家族のもとへ戻ろうとしたアフガニスタンの女性。タリバンの司令官によって夫からの逃亡罪を言い渡され、罰として夫の兄弟に押さえつけられ、夫によって耳と鼻を切り落とされた。捨てられていたところを援助活動家と米軍によって助けられ、撮影後米国に渡り顔の再建手術を受けた。現在は米国在住。 Jodi Bieber, South Africa, Institute for Artist Management/Goodman Gallery for Time

  残酷な悲劇を伝えたあの写真

注)スライドショーの一部に衝撃的な写真が含まれます

 昨年8月の米タイム誌の表紙に、ある少女の写真が掲載された。鼻を切り落とされた傷痕が生々しく残るその姿は世界に衝撃を与えた。しかし、表紙に「私たちがアフガニスタンを去るとこうなる」と書かれていたこともあり、被写体の不幸がオバマ米大統領の軍事政策のプロパガンダに利用されたとの批判も巻き起こった。

 その半年後、この写真は世界報道写真大賞を受賞したことで再び注目を集めた。大賞が批判と称賛を同時に浴びるのは毎年のことだが、今年も秀逸な写真がそろっていたハイチ地震の作品から選ばれなかったことに疑問の声も上がった。

 だが少女の写真に、一瞬で目に焼き付く強烈な力があるのは間違いない。審査委員長のデービッド・バーネットは「誰かに『あの少女の写真』と言われれば、すぐに思い浮かぶような、一生の間に出合える10枚のうちの1枚になり得る写真だ」と評価する。

 少女が受けた許されざる暴力は今、タイム誌の呪縛から離れてあらためて世界に告発された。この作品を含む入賞作品約200点を展示した『世界報道写真展2011』は、東京都写真美術館で6月11日から8月7日まで開催される(その後大阪・京都などを巡回)。

 ---片岡英子(本誌フォトディレクター╱世界報道写真コンテスト2010審査員)
 
 世界報道写真(World Press Photo)財団

 関連記事:
 世界報道写真大賞を狙え---コンテスト直前ゼミ
 世界報道写真コンテスト 「抗議の叫び」が大賞に
 世界報道写真コンテスト:審査の裏側
 世界報道写真コンテスト「今年最高の一枚」など存在しない

MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中