Picture Power

世界報道写真コンテスト 「抗議の叫び」が大賞に

World Press Photo 2010

Photographs by

世界報道写真コンテスト 「抗議の叫び」が大賞に

World Press Photo 2010

Photographs by

大賞:屋上で大統領選挙結果に抗議して叫ぶ女性たち(イラン)
Pietro Masturzo

 2月12日にオランダのアムステルダムで、世界報道写真コンテストの結果発表と記者会見を終えた私たち審査員一同を待っていたのは、大賞をめぐる大論争だった。「報道写真に新たな視点を提示する素晴らしい作品」という称賛もあれば、「こんな分かりづらい写真が大賞なのか」と非難も浴びせられた。

 今年の大賞作品は、ひと目見て頬を打たれるような衝撃はない。しかし静けさの中にある強い緊張感は視覚と感情の両方に訴え掛ける。世界中で報じられたトップニュースが住居の屋上というごく普通の生活環境にも垣間見られるという事実を伝え、そこに生きる人々に重くのしかかる権力について深く考えさせられる傑作だ、と私は思う。

 コンテストの入賞作品約170点を展示した『世界報道写真展2010』が東京都写真美術館で6月12日から8月8日まで開催される(その後大阪・京都などを巡回)。ネット媒体の台頭と新聞・雑誌の衰退により、過去数十年にわたりフォトジャーナリズムの根幹を支えてきたビジネスモデルは崩壊したが、新たな展開が始まっている。ここに並ぶいくつもの受賞作品は、報道写真が持つ可能性の広がりを感じさせてくれる。

片岡英子(本誌フォトディレクター)

2010年6月16日号掲載


 関連記事:世界報道写真コンテスト:審査員として参加した本誌フォトディレクター・片岡英子が見た「審査の裏側」

 関連記事:世界報道写真コンテスト 「今年最高の一枚」など存在しない

 受賞作一覧
 
 *毎年行われる世界最大級の報道写真コンテストで、今年は128カ国のプロの写真家から10万1060点の作品が寄せられた。

※世界報道写真(World Press Photo)財団

MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中