コラム

今年のクリスマスケーキは例年より小さい? 世界的な食品値上がりで笑う国

2021年12月24日(金)15時10分
クリスマスケーキ

今年のケーキが小さくても驚くには値しない(写真はイメージです) Violet711-iStock


・食品価格は世界的に値上がりしており、ケーキにもよく使われる小麦や油量種子はとりわけ高騰が目立つ。

・その主な原因には、地球温暖化、コロナ禍、そして投機的資金があげられる。

・食糧の大生産国ロシアは、この状況を追い風に国際的な影響力を強めており、これは「小麦外交」とも呼ばれる。

クリスマスイブにケーキを買って帰る人も多いだろうが、今年は例年と比べて値段がほとんど同じなのにサイズが小さくなっていても不思議ではない。食品価格は世界全体で主に3つの理由によって値上がりしているが、それによって笑う国もあり、ロシアはその筆頭といえる。

クリスマスケーキは小さくなるか

食品価格はどれくらい値上がりしているのか。以下では、ケーキによく使われる小麦、食用油、鶏卵に絞って、その変化を見てみよう。

mutsuji211224_xmas_data1.jpg

小売物価統計調査によると、東京都区部の小売価格で、今年11月の1kgあたりの小麦価格は1年前より約20円上昇した。食用油に至っては1kgあたり約60円と大幅な値上がりで、価格が比較的安定している食品の代名詞ともなってきた鶏卵でさえ、1パックあたり約12円上昇した。

これらに加えて、バニラエッセンス、チョコレートの原料カカオ豆などもこの数年、価格の高騰が続いている。そのため、今年のクリスマスケーキが例年より小さかったとしても、(がっかりはしても)驚くことではない。

もっとも、これら以外の食品もその多くが値上がりしていると、多くの人は日常的に実感しているだろう。実際、食品価格が全体的に上昇していることもあって、小学校の給食費さえ上がっている。やはり小売物価統計調査によると、東京都区部の小学校で給食費の1年間の合計は、2020年には平均4万3659円だったが、2021年には5万3479円と約1万円値上がりした。

世界レベルの食品値上がり

とはいえ、食品値上がりは日本だけではなく世界全体のものだ。国連の食糧農業機関(FAO)によると、世界全体の食品価格の目安となる食糧価格指数は2021年11月に1年前より27.3%上昇した。この上昇ペースは2011年以来最も高い水準とFAOは警告しており、なかでも穀物と油量種子の価格上昇が目立つという。

世界レベルの食品値上がりには、大きく3つの原因があげられる。

第一に、地球温暖化の影響だ。例えば穀物の場合、大生産地帯である米国やカナダ、ロシアなどでは今年の夏、雨が少なく、気温が高い時期が長くなった結果、収穫量が落ちたとFAOは指摘する。異常気象が生産にダメージを与えたことは、油量種子や食肉など、多くの品目でも共通する。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な

ビジネス

米年内利下げ回数は3回未満、インフレ急速に低下せず

ワールド

イラン大統領ヘリ墜落、原因は不明 「米国は関与せず

ビジネス

FRB副議長、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 5

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story