コラム

英国で女性蔑視もヘイトクライムに含める動き  元巡査でさえも「声を上げにくい」現状

2021年03月19日(金)18時03分

「警察の中にはいまだに性差別主義や女性をモノとして見る女性蔑視の有害な文化がある」。

フィッシュ氏が警察での勤務を開始した「1980年代よりはずいぶん変わった。でも、社会の変化に追いついていない」。

もし自分が犯罪の被害者になったら?「届け出る前に、じっくりと考える必要がある。どのように受け止められるかを考えてしまう」。

すべての警察官に十分な理解があるわけではないという。

「有罪率(が低いこと)も考慮するし、刑事事件の捜査から裁判までの司法体制の中で、女性は報われない。無限に屈辱を与えられ、何度も何度も同じ話を繰り返して説明しなければならない。はたして自分が言ったことを司法側が信じてくれるだろうかと思いながらの行動になる」。

被害者を責めることが「風土病のようになっている」、「自分の身に起きたことを説明し、正当化しなければならない。非常に困難なプロセスだ」。

一方、同じ番組に出たハンプシャー警察のオリビア・ピンクニー巡査は「全英巡査カウンシル」を代表して、「女性たちが勇気を出して声を上げれば、警察も含む誰もが耳を傾けると思う。毎日、具体例を見ている」。

時には「間違えることもがあるが、間違いは指摘してほしい。改めることができる」。

ロンドン警視庁は、新型コロナウイルス感染阻止のために集会が禁止されている中、サラさんのために集まった人々の一部に手錠をかけたり、押さえつけたりし、その様子が大々的に報道されて、批判を招いた。

クレシダ・ディック警視総監は警察官らの行動について「見直しが必要」としたものの、対応自体は「大人数の集団」に対処するため必要だったという見方を示している。

プリティ・パテル内務相は警視庁の対応について独立調査の開始を依頼した。

一方、17日、北西部に位置するグレーター・マンチェスター市はジェンダーを起因にした攻撃をなくするための10か年計画を提案した。提案は、女性蔑視をヘイトクライムの1つとし、男性の意識変化をもたらすキャンペーンを行うことを目指す。

同市で記録された年間暴力事件の中で、家庭内暴力、レイプ、ストーキング、脅し行為などは45万件に上る。

計画案によると、ジェンダーを起因とする攻撃を撲滅するための委員会を設置し、こうした攻撃の被害者も参加する。

グレーター・マンチェスターのアンディ・バーナム市長は男性たち、少年たちが

「自分たちの行動について考え、女性、少女たちが自分たちの行動によってどう感じるのか」を顧みるキャンペーンを開始したいという。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

小林恭子

在英ジャーナリスト。英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。『英国公文書の世界史──一次資料の宝石箱』、『フィナンシャル・タイムズの実力』、『英国メディア史』。共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数
Twitter: @ginkokobayashi、Facebook https://www.facebook.com/ginko.kobayashi.5

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

USスチールは米にとどまるべき、バイデン氏の方針変

ビジネス

インフレ鎮静化は進行中、「相当な」不確実性ある=S

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米指標が労働市場減速を示唆

ビジネス

米国株式市場=ダウ7日続伸、米指標受け利下げ観測高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 4

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 5

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    自民党の裏金問題に踏み込めないのも納得...日本が「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story