コラム

大聖堂崩落が告げる「欧州の終焉」......しかし西欧的価値観の輝きは永遠に

2019年05月17日(金)17時45分

5月23日から、欧州議会選挙が行われる。EU基本条約「リスボン条約」によって拡大されたと言っても、その立法権は限られているので、各国での選挙結果は諸政党への人気投票の意味のほうが大きい。特に反移民、反EUを旗印とする極右政党が欧州議会選挙でいかなる成績を示すかは、EU離脱を企図するイギリスは言うに及ばず、21年に総選挙が予定されるドイツでも、大きな意味を持つ。

面白いことに極右諸政党は反EUを叫びながらも、欧州議会から支給される活動資金に多くを依存している。だが本国でも議席を増やせば、本気でEUをつぶしにかかるだろう。

明治時代と異なり、今の日欧関係は死活問題ではない。自由貿易や民主主義などの旗印も、ヨーロッパは相手次第で揚げたり降ろしたりする。対中関係でも日欧は立場を異にする。

しかし西欧が育んだ人間中心主義、民主主義は、今や日本人自身のものとなった。欧州でこれらの価値観が希薄化しても、日本は動ずることなく自分を持して、欧州とは是々非々の協力をしていけば良かろう。

<本誌2019年5月21日号掲載>

20190521cover-200.jpg※5月21日号(5月14日発売)は「米中衝突の核心企業:ファーウェイの正体」特集。軍出身者が作り上げた世界最強の5G通信企業ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)。アメリカが支配する情報網は中国に乗っ取られるのか。各国が5Gで「中国製造」を拒否できない本当の理由とは――。米中貿易戦争の分析と合わせてお読みください。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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