コラム

洗わないのがクールに イギリスで流行しだした「no wash」「low wash」

2023年07月06日(木)13時35分
洗濯物

手当たり次第に着た物を洗濯するのは環境に悪いしむしろ怠惰、という流れに(写真はイメージです) karenfoleyphotography-iStock

<環境考慮か、コロナで働き方が変化したせいか、服を「洗わない・あまり洗わない」ことが突如トレンドになったが、僕はずっと前から実践している>

どうやら僕は、流行の最先端を行っていたらしい。もう何年もの間、僕は、服を洗わないことに関して、もしくは無駄に・習慣的に服を洗わないということに関して、「哲学」を持つ(僕の知る限りで唯一の)人物だった。

でもイギリスではここ数カ月で、「no wash(洗わない)/low wash(あまり洗わない)」スタイルがむしろファッショナブルになってきたようだ。この「動向」についてさまざまなメディアで目にしたし、世間は僕がこれまでいつも言っていたような論調に帰結しているが、とはいえこの流行を支持する最近の人々は僕よりやや極端だ。僕のやり方は、絶対に服を洗わない、というわけではない。「洗いすぎない」ようにするのが信条だ。

たぶん僕は(自分の正しさが証明された!と)喜ぶべきなんだろうが、ちょっと苦々しい気分だ。これまで何度かこの考えを人に説明しようとするたびに、怠惰だとかドケチだとか言われて冷笑され、「何のにおいだろうと思ったよ......」などとからかわれたりしてきたからだ(まさに誰でも思いつくようなジョークを、さも冴えた冗談のように人から言われることほどつまらないものはない)。そして今、そんなことを言っていた人の一部は「洗わない」トレンドを取り入れ始めている。

というわけで一応言っておくと、洗わない派の論点としては、

①僕の考えるところ、あたかも「きちんとしている人」であるかのように、着た服を全て何も考えずに洗濯かごに投げ込むのは、一度着たTシャツを数日後にまた着るつもりで椅子に掛けておくのよりも、実際のところは「怠惰な」家事のやり方だ。

②家事が増えるだけだから、単純に馬鹿らしいというのもある。必要以上の頻度で洗濯をすることになってしまう。

③生涯にわたり何度も何度も、必要以上に電気と水を使い続けるのだから、環境にも悪い。

④どの服をいつ洗うべきかタイミングを見極めるのは、難しいことではない。汗をかいたジム用のウェアや肌に触れて着ていた物だったら、1回か2回の着用で洗濯が必要だ(試してみるといいのが、着用後の服を日光の下に1時間置いておくこと。洗ったほうがいい物の場合は匂いが際立ってくるだろうが、大抵は日光消毒であと一度くらい着られるようになる)。

セーターのように素肌に着ない服だったら、赤ワインやマスタードをこぼしでもしない限り、何カ月も洗わずに持つ。僕は約6年の間、一度も洗ったことのないジーンズも持っている。毎日履いていた旅行中にはちょっと匂い出したから、僕はイタリアのティレニア海にそのまま入って、ビーチを歩いて乾かした。変な話だが、旅の思い出深い体験だった。

⑤何度も何度も洗うと服の寿命が縮まる。型崩れし、細かい繊維が抜け落ち、色あせる......。愛用する服だったら残念だし、お金が無駄になるし、(もう一度言うが)環境にも悪い。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カーライルが日本KFCにTOB 1株6500円

ワールド

インドネシア、25年経済成長予測引き下げ 財政赤字

ワールド

中国、4月の豪州産石炭輸入が約4年ぶり高水準

ビジネス

SOMPOHD、発行済み株式の4.04%・770億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story