コラム

ロックダウン大幅緩和でイギリスはお祭り気分

2021年04月28日(水)11時00分

カモメたちにもはっとした。それまで気付かなかったが、長いこと彼らの姿もほとんど見かけていなかった。僕の町は海からそう遠くなく、カモメたちは人がいるときだけ町に来るらしい。人々が落とした食べ物をあさりに来るのだ。

「落とす」と言っても、実際は多くの人が食べ残しを車の窓から投げ捨てていく。おかげでわが家の前の駐車場はカモメたちのお気に入りスポットと化し、投げ捨てられた食べ残しにカモメたちが群がり、争奪戦を繰り広げている。カモメ同士の騒々しくドラマチックな空中戦もしょっちゅうだ......ハンバーガーのバンズやフライドポテトをめぐって争っている。

ロックダウンの間にどのくらい慎重になったかは、人それぞれだ。僕の場合は中間くらい。酔っ払いとぶつかりそうになって、お詫びのしるしにハグされそうになったときはちょっと慌てた。一方、ハグし合う若者たちとは対極的に、ある高齢の夫婦が、市場でバンから荷下ろししている2人の人の間を、ほんの一瞬通り過ぎるのさえためらっている様子も目にした。きっとこの夫婦、何カ月も2人きりでどこにも行かずに過ごしていたに違いない。

僕が何より感銘を受けたのは、長いロックダウンの間、みんな信じられないほど従順だったということだ。「僕の」町に押し寄せてきた、この奇妙でだらしない酔っ払いたちが、何カ月もおとなしく家でじっとしていたなんて。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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