コラム

最大野党(のはず)の英労働党が崩壊寸前

2016年10月06日(木)11時30分

 もちろん政党は時代の変化に対応しなければならないし、アイデンティティーを変化させることもある。とはいえ労働党は、まったく誤った方向に舵を取り、広い支持を得られない「過激」な政策に向かったようだ。これまで支持基盤だった場所で、労働党の支持は弱体化している。スコットランドでは、今ではスコットランド民族党が政治を引っ張っている。イングランドとウェールズの労働者階級地域では、イギリス独立党(UKIP)が大きな支持を集めている。

 一方、保守党はイングランドの労働者階級から常に広く支持されてきた。ブレグジットの選択にうまく対応し、移民の制限に取り組んで、安定の経済政策を示すことができれば、保守党は労働党に不満を抱く労働党支持層も取り込むことができるかもしれない。

【参考記事】一般人に大切な決断を託す国民投票はこんなに危険

 かたや第3政党の自由民主党は、今こそ自分たちが「中道左派」の主要野党になれる歴史的チャンスとみている。

 僕は今の状態を「労働党の死」とは言わない。なぜなら労働党は国民からそっぽを向かれた80年代を経て、復活を遂げた経験があるからだ(保守党も90年代後半から総選挙に連続して敗北するなど、同じような最悪の時代を味わった)。しかしどちらの場合も、再び与党に返り咲くまで一世代ほどの時間を必要とした。加えて今の労働党を見る限り、状況はさらに危機的だ。かつてのような復活劇を成し遂げられるとは、とても思えない。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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