コラム

文在寅大統領は何がしたいのか、なぜ韓国はGSOMIAで苦しむか

2019年11月29日(金)14時30分

韓米同盟は危機なのか(6月29日、青瓦台にて) Kevin Lamarque-REUTERS

<アメリカの圧力で最終的にはGSOMIAの破棄延期を決めた韓国だが、土壇場まで逆らった。韓国はアメリカに背を向け中朝露につく気だ、という観測も飛び交った。そこに今週、ワシントン・ポストが「韓米同盟の危機」に関する記事を掲載した>

11月23日、アメリカの『ワシントン・ポスト』に、大変興味深い記事が掲載された。

タイトルは「66年間続いた韓米同盟が、深刻な問題に陥っている」。

リチャード・アーミテージ元国務副長官と、ビクター・チャ戦略国際問題研究所の2人による記事の発表である。

この記事は、韓国の『東亜日報』(日本語版)でも紹介されている。

さて、ここで目を引いたのが、アメリカと韓国の問題として引いている具体例だ。

その部分を、以下にそのまま訳した。


中国は関係の悪化の重要な要因として浮上している。 米国と中国の貿易戦争は、ワシントンとソウルの関係を緊張させている。

米国は、同盟国に対して、5GネットワークにHuaweiの機器を使用することを止めるように要請しているが、韓国の携帯電話キャリアは、この要請と摩擦を起こしている。

そして、2017年に韓国が米国の対ミサイル防衛システムを受け入れたために(訳注:THAADのこと)、中国は韓国企業に罰を与えてきたにもかかわらず、韓国は依然として中国の提案した多国間貿易協定(米国を含まない)に参加したいと考えており、米国の「自由で開かれたインド太平洋コンセプト」を支持しない。このコンセプトは、アジアにおける航行の自由に対する中国の挑戦(訳注:軍事的覇権)をチェックするように設計されている。


ここに書かれている、5GネットワークとHuaweiの問題、そしてTHAADの問題は、日本語の記事をよく見るので、ここでは説明しない。

では一体、「韓国は依然として中国の提案した多国間貿易協定(米国を含まない)に参加したいと考えている」というが、これは何のことだろうか。韓国は、何に参加しようとしているのだろうか。

中国とロシアが一致協力している

これはおそらく、「上海協力機構」において、中国が主導して、ロシアとインドと共に「新しい多国間貿易システムをつくろう」と提唱しているものを指すのだと思う。

今年2019年6月にキルギスで行われた同機構サミットで、このような提案が出たのである。もちろん中国は、アメリカによる「中国封じ込め」を警戒して、対抗しているのである。

それでは「上海協力機構」とは何か。

2001年に、中国と、ロシア&元ソ連の国の一部でつくった組織である。原加盟国は、中国・ロシア・カザフスタン・タジキスタン・キルギスの5カ国である。

この機構は、中国とロシアが一致協力しているところが、最大のポイントである。

何がどうなっているのか。話は、欧州連合(EU)から紐解きたいと思う。

ソ連が崩壊して、ソ連を構成していた共和国は独立した。ソ連の衛星国であった東欧の国々はもちろんのこと、ソ連の元共和国でさえ、ヨーロッパをEUを見て、「あちらの仲間に入りたい」と思い始めていた。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story