コラム

イランで迫害されるキリスト教徒を顧みないメディアの偽善

2020年02月07日(金)19時00分

メアリーが訴え続けたように、イランには宗教の自由も、表現の自由、報道の自由もない。そうした自由を行使する者は、体制によって強制的に口を封じられる。女性は頭髪を覆うスカーフを取り外しただけで拘束され、同性愛者は処刑される。昨年12月には自分をレイプしようとした男を銃殺した女性に対し絞首刑が執行された。ハサン・ロウハニが大統領になって以来、処刑された女性は98人に上る。

人権侵害にも見て見ぬふり

1990年にイスラム教の棄教を理由に絞首刑に処されたイラン人牧師フセイン・スードマンドの家族は今年に入り、マシュハドにあった彼の墓がいつの間にか撤去され更地にされたと訴えた。体制は家族が墓で彼を悼むことも認めない。棄教者は神と体制への反逆者だからだ。

年末年始にかけ、イランとアメリカの対立をめぐる問題は日本でも大きく報じられ、アメリカを責める論調が目立った。しかし、イランの体制に抑圧され犠牲となっているイランの市民はほぼ一顧だにしない。

トランプ政権の権力乱用を批判するリベラルメディアは、イランの体制の権力乱用、人権弾圧からは目を背ける。彼らはイランの体制を擁護し、自由や人権のために立ち上がる市民を見捨てている。

この偽善は深刻だ。

<本誌2020年2月11日号掲載>

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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