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イスラエルだけの責任ではない「ガザ封鎖」...エジプトが直面する「ハマスのジレンマ」とは?
ガザ地区ラファとエジプトの間に設置されたフェンス(2月) IBRAHEEM ABU MUSTAFAーREUTERS
<ガザを封鎖しているのはイスラエルだけではない。南はエジプト国境に接している。なぜそのエジプトが新たに壁を建設しているのか。ハマスとの「関係」について>
パレスチナ自治区ガザはよく「天井のない監獄」と呼ばれる。そしてガザを鉄条網のフェンスやコンクリート壁で封鎖し、市民を「監獄」に押し込めているのはイスラエルだと断罪される。
この言説には重要な事実が欠落している。ガザを封鎖しているのはイスラエルだけではないのだ。
ガザは西を海に、北と東、南を壁に囲まれた365平方キロほどの地区で、北と東を封鎖しているのはイスラエルだ。しかし南を封鎖するのはエジプトである。
エジプトもイスラエル同様、ガザとの国境にフェンスと壁を複数設置している。
昨年10月7日にイスラム過激派組織ハマスがイスラエルに対する大規模テロ攻撃を実行し、戦争が開始されて以降もガザ地区の人々が地区外に避難できないのは、エジプトが受け入れを拒否しているからだ。
エジプトはパレスチナ同様、アラビア語を話しイスラム教を信じる人が国民の大多数を占める。かつてパレスチナの大義のために、イスラエルと4度にわたり戦争をした過去もある。
にもかかわらずガザ市民の前に国境を閉ざす主たる理由は、ガザを実効支配するハマスが、20世紀初頭にエジプトで誕生したイスラム原理主義組織ムスリム同胞団の下部組織だからだ。
ハマスは1987年、ムスリム同胞団のメンバーであるアフマド・ヤーシーンらによって、そのガザ支部として創設された。88年に発布されたハマス憲章第2条には「イスラム抵抗運動(ハマスの正式名称)はパレスチナにおけるムスリム同胞団の一翼である」と明記されている。
同胞団が目指すのは政治、経済、教育、社会、生活、文化等の全てがイスラム法で統べられる世界だ。世俗法による統治を行う既存体制の全てを敵視し、国家を打倒し、イスラム革命を実現するという目的のためには暴力をいとわない。アルカイダやイスラム国といったイスラム過激派組織の淵源にあるのが同胞団とそのイデオロギーだ。
現代エジプトの歴史は、同胞団との戦いの歴史だ。イスラエルと和平条約を締結したサダト大統領を「不信仰者」と呼び、暗殺したのも同胞団の分派組織メンバーである。
ハマスもまたエジプトを悩ませ続けてきた。07年にガザ地区を実効支配したハマスは、08年には国境にある壁を爆破し、数万人のガザ市民がエジプトに流入した。
2011年1月のいわゆる「アラブの春」では、エジプト各地でムバラク政権打倒の運動や暴動が発生するなか、武装勢力が刑務所を襲撃し11カ所から2万人以上が脱獄、犯罪や暴力が激増し治安悪化が極限に達した。
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