ニュース速報

ワールド

TPP大筋合意、巨大自由貿易圏誕生へ前進 米議会は懐疑的

2015年10月06日(火)11時22分

 10月5日、アトランタで開かれていた環太平洋経済連携協定(TPP)の12カ国閣僚による交渉は、大筋で合意に達した。写真は12カ国閣僚の集合写真。1日撮影。代表撮影(2015年 ロイター/USTR Press Office/Handout)

[ワシントン/アトランタ 5日 ロイター] - 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する日米を含む12カ国は5日、米ジョージア州アトランタで開いていた閣僚会合で大筋合意に達した。12カ国は為替など幅広い経済問題で協力していくと表明、世界経済の40%を占める巨大な自由貿易圏の誕生に向け前進した。

米国は、日本製自動車部品の80%超で関税を撤廃することで合意。また日本製自動車に課す2.5%の関税を25年かけて撤廃することでも合意した。

米国、メキシコ、カナダ、日本は、TPP域内で生産された部品をどの割合使えば自動車関税をゼロにするかを定める「原産地規則」でも合意した。

日本は、豚肉、牛肉の関税引き下げや、バター、米、小麦の輸入拡大で合意した。

焦点となっていたバイオ医薬品の開発データの保護期間をめぐってはこれまで、米国が12年を求める一方、豪、ニュージーランドなどは薬剤費の増大につながるとして5年を主張してきたが、結局、最低5年に別の手続き期間として3年を加え「実質最低8年」とすることで各国が妥協した。

TPP参加国は為替政策の原則について協議することでも合意。米国の製造業者の間で日本が自国の自動車産業などに有利になるように円安に誘導しているとの懸念が出ていることを一部反映したものと見られる。

このほか今回の合意には労働者の権利や環境保護をめぐる最低基準も盛り込まれている。

TPP交渉に参加した各国の閣僚は、TPPは将来的に中国を含め、新たな参加国を受け入れると表明した。

大筋合意を受け12カ国は今後、議会での批准手続きに入る。

オバマ大統領は、TPPは米国民、および米国企業に公平な機会を与えるものとして合意を歓迎した。

米ホワイトハウスのアーネスト報道官は大筋合意を受け、批准に向け政府と議会の間ですでに協議が行われていると表明。「今回の合意が有益であることを説得することがわれわれの目標だ」とし、来年中に手続きが完了しない理由はないと述べた。

ただ、米議員の間からは慎重、もしくは懐疑的な見方が出ている。 ハッチ上院財政委員長は「合意内容がまったく不十分」と指摘。サンダース上院議員は「ウォール街と大企業の勝利」と批判し、上院でTPP合意を阻止するために全力を尽くすと述べた。一方、共和党のブレイディー下院議員は「10億人もの中間層が、米国のモノやサービスの顧客になる」としてTPPを歓迎した。

民主党の多くの議員や労組は、TPPが米国内の雇用と環境規制が損なわれる事態を懸念。また、共和党の一部議員は、たばこ会社が禁煙を促す措置をめぐり政府に訴訟を起こすことを阻止するTPPの条項に反対している。

フロマン米通商代表部(USTR)代表は「この問題は議会にとり、2015年ではなく、むしろ2016年の懸案となる」と述べた。

*内容を追加します。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米1月の製造業生産0.1%低下、予想下回る 自動車

ワールド

交渉相手はプーチン氏のみ、米欧との合意が前提=ゼレ

ワールド

米副大統領、欧州の規制・政治巡り批判展開 ミュンヘ

ワールド

中国外相、対米政策の一貫性強調 「抑圧には最後まで
MAGAZINE
特集:ガザ所有
特集:ガザ所有
2025年2月18日号(2/12発売)

和平実現のためトランプがぶち上げた驚愕の「リゾート化」計画が現実に?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパーエイジャーが実践する「長寿体質」の習慣
  • 2
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン...ロシア攻撃機「Su-25」の最期を捉えた映像をウクライナ軍が公開
  • 3
    世界中の90%以上を生産...「半導体の盾」TSMCは台湾を守れるのか? むしろ中国を駆り立てるのか?
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    鳥類進化の長年の論争に決着? 現生鳥類の最古の頭骨…
  • 6
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 7
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 8
    駆逐艦から高出力レーザー兵器「ヘリオス」発射...ド…
  • 9
    終結へ動き始めたウクライナ戦争、トランプの「仲介…
  • 10
    「質のよい睡眠がとれている人」は「やや太り気味」…
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉妹で一番かわいがられるのは?
  • 4
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 5
    2025年2月12日は獅子座の満月「スノームーン」...観…
  • 6
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップル…
  • 7
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ド…
  • 8
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 9
    極めて珍しい「黒いオオカミ」をカメラが捉える...ポ…
  • 10
    「だから嫌われる...」メーガンの新番組、公開前から…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中