プーチンの成績表:巧みな情報工作で外交は大成功、でもロシアは腐敗した「泥棒の国」に
ロシア情報機関はブレグジット(イギリスのEU離脱)も後押しした。NATOがフランスのエマニュエル・マクロン大統領の言う「脳死」状態に陥ったのも、アメリカとその他の加盟国間の不和を広げようとするプーチンの動きが大きな原因だった。
プーチンのシリアへの介入はバシャル・アサド大統領の体制を救い、ロシアはアメリカに代わってシリア国内で影響力を競い合う無数の勢力の最終的な調停者となった。
現体制の持続性に疑問
プーチンは非の打ちどころがない情報工作と果断な軍事作戦の組み合わせによって、これらの戦略目標を達成した。
だが、プーチンがロシアへの手痛い制裁の引き金を引いたのも事実だ。プーチンの「傀儡」であるトランプも、欧米でプーチンのペテンに対する怒りが高まり、厳しい反応が出る事態を止められなかった。長期的に見れば、いずれプーチンは個々の細かい局面では賢明だが、大きな戦略を見誤った愚か者だったと証明される可能性は十分ある。
プーチンはロシア国内の政治状況を操作することにも成功した。偽情報の流布、メディア支配、宣伝工作、警察と情報機関を使って政敵を排除し、幅広い支持を獲得した。
プーチンの下手くそなアイスホッケーの中継や、上半身裸になってシベリアで狩りに興じるマッチョな映像は、英雄を求めるロシア人気質によく合うようだ。脚色された英雄像だが、この分かりやすい演出はうまく機能してきた。
だが経済面では、プーチンは無能なリーダーだった。ロシア経済の構造改革については、ほとんど何もしていない。民営化は遅々として進まず、経済構造は石油と天然ガスの輸出に依存する第三世界型経済のままだ。資源産業と経済活動の大半を新興財閥オリガルヒが支配している。
ロシアはプーチンの下で、経済破綻の社会主義国家から、非効率で腐敗した「泥棒の国」に姿を変えた。最悪なのは、それが意図的な選択だったことだ。プーチンは汚職の拡大を権力強化の手段に利用し、法と私有財産権に基づく経済発展をないがしろにした。
長期的には、3歳児並みのアイスホッケーと巧みな政治宣伝、目覚ましい外交的成果と硬直した経済の組み合わせでは、現体制を維持できなくなるかもしれない。プーチンが72歳になり、大統領の任期が切れる2024年が最初の関門になりそうだ。
<本誌2019年12月24日号:特集「首脳の成績表」特集より>
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2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。
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