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Web3は大きな富を生み、その果実は広く分散されるようになる。その代償とは
次に一般ユーザーが個人データをAIに提供するようになるのだろうか。今は、多くの人が自分のデータを他人に見られたくないと思っている。その考え方が、果たして変化するのだろうか。
個人的には、人々が自分のデータを進んでAIに提供するようになるには、万全なセキュリティ、インセンティブ、社会的意義の3つの要素が不可欠だと思う。
セキュリティーに関しては、 ビタリック・ブテリン氏らの論文に詳しい。Soul Bound Tokenや、ゼロ知識証明、ハッシュ関数、Garbled Circuits、Designated-verifier Proofなどといった技術を組み合わせることで、誰にどの程度の情報をどのくらいの時間の間に共有するのかを細かく設定できるようになると言う。
2つ目の要素であるインセンティブに関しては、やはり暗号通貨で報酬を支払うという方法だろう。One River Asset ManagementのEric Peter氏は、ブロックチェーンが過去最高に安全なデータ転送システムであることは、米国の金融当局の関係者でさえ認めるようになってきたと言う。問題は、ブロックチェーンが金融システムに取り込まれるようになるかどうかではなく、いつそうなるかだと言う。同氏は「20年後とか、そんな先の話ではないと思う」と語っている。
しかし暗号通貨をもらえるからといって、一般ユーザーが個人データをAIに提供するようになるのだろうか。
Web3に関心を持つ人たちの間で、ここ半年ほどで共通認識になったのが金銭的インセンティブがいかにパワフルであるのか、ということだ。ゲームをすれば暗号通貨を稼げる、運動すれば稼げるといったアプリが大流行したが、このことからも分かるように、金銭的インセンティブで行動変容する人は、意外に多いということが明らかになった。
3つ目の要素である社会的意義に関しては、データ提供で社会課題が解決されるという事例が増えて来れば、自らデータを提供したいという人が増えてくるのではないかと思っている。
一般ユーザーのデータ提供を促進する団体OpenMinedは、「もし地球上のほとんどの人がデータ提供に協力すれば、癌を撲滅できるかもしれない」と語っている。
癌にかかるかどうかは、生活習慣に左右されることが分かっている。何を食べて、どんな生活をすれば、癌にならなくてすむのか。そうした研究は続けられているが、被験者数が限られているためデータが少なく、まだまだ分からないことが多い。
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