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Web3は大きな富を生み、その果実は広く分散されるようになる。その代償とは
ネットワーク効果は、Facebookでも起こった。ユーザーが増えれば増えるほど、情報発信は楽しくなる。自分の友達のほとんどがFacebookを利用するようになると、メールで連絡するよりもFacebookメッセンジャーで連絡するほうが便利になり、メールの利用が減っていった。コミュニティーのネットワーク効果だ。
コミュニティーのネットワーク効果よりもパワフルなのがAIのネットワーク効果だ。Google検索は、利用者が増えれば増えるほど、利用者が求めている情報の傾向が分かる。それに従って、AIが情報の並べ順を変えるので、求めている情報により素早くアクセスできて便利になる。便利になるので、より多くのユーザーが利用し、ユーザーが増えればどの情報が有益なのかというデータがより多く集まる。データが集まればさらにAIが賢くなる。
ハーバード大学の二人の教授が書いた「Competing in the Age of AI(AI時代の戦い方)」では、AIのこのネットワーク効果が勝ち組企業のビジネスモデルになっている、として、アマゾンやIKEA、Ant Financialなどの事例を紹介している。
こうしたコミュニティやAIのネットワーク効果で、ネット企業の収益が逓増していった。大量生産の収益逓減モデルから、AIの収益逓増のモデルに、企業の価値創造の方法が切り替わった、というのが二人の教授の主張である。
収益逓増モデルに入ったので、ネット大手が巨大化し、富と権力がネット大手に集中した。これがWeb2と呼ばれるネットの1つのパラダイムであり、これに対する反発がWeb3である。
Web3では、ネット大手に集中した富と権力を一般ユーザー側に取り戻そうとしている。そのために必要なのは、データを一般ユーザー側に取り戻すこと。データこそがAIのネットワーク効果を生むからだ。
さらに言えば、今までのように個人データを秘匿するのではなく、積極的にAIの学習用に提供すれば、AIはますます賢くなり、より大きな価値を生むことになる。
一般ユーザーが自分の個人データを積極的に提供するようになる。そんなことが可能なのだろうか。ビタリック・ブテリン氏らが書いた「Decentralized Society」という論文では、そのために必要な技術のコンセプトや数式などが記載されている。
データを一般ユーザー側で管理するには、データのストレージが必要になる。データストレージとしては、ユーザーの手元の記憶デバイスでもいいし、信用できるオンラインのストレージでもいい。ネット企業が運営するオンラインストレージが信用できないのなら、InterPlanetary File System(IPFS)と呼ばれる分散型のオンラインストレージの仕組みを使ってもいい。
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