コラム

薬を使わないデジタル療法で教育・医療にアプローチ AIが人間を進化させる未来とは

2020年02月05日(水)13時00分

同博士によると、没入感には脳の可塑性を高める可能性があるという。可塑性とは、脳の回路を組み換えることができる状態のこと。子供のころに形成された性格や考え方の癖は、大人になるとなかなか変えられないとみられてきたが、最近の神経科学では脳には可塑性があることが分かってきた。つまり脳の回路は、大人になっても組み替えることが可能だということだ。

ゲームに没入すると、プレーヤーの脳に負荷がかかる。集中や記憶、決定、言語、身体動作、認識など、トレーニングしたい脳の特定の回路に負荷をかけることで、脳の回路を組み換えることができるというわけだ。

「人類は、(デジタル療法で)脳の回路のスイッチを意図的に入れたり切ったりできるようになった」「遠い将来には、人類は脳のどの回路を使うのかを、自分で完全にコントロールできるようになるだろう」と同博士は予言する。

VR+αの体験が脳の回路を組み替える

「あくまでも仮説だが」と断った上で同博士は、「没入感が高ければ高いほど、脳の可塑性が高まる、という仮説がある」と話す。没入感は、スマートフォンのゲームより、VRゲームのほうが高いはず。そこで同博士は、VRを始め、没入感を高めるための技術や仕組みをいろいろ取り入れ、これまでに目的がそれぞれ異なる6種類のゲームを開発している。

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例えばBody-Brain Trainerというゲームでは、ゲームのプレイ中に身体も動かさないといけないので、認識をつかさどる脳の部位と身体動作をつかさどる脳の部位の両方を刺激。ゲームのパフォーマンスと同時に心拍数も計測し、心拍数に従ってゲームの内容を変化させる、心拍数を一定の範囲内にとどめるようにしている。「ある程度まで心拍数を上げたほうが認識能力が上がるという仮説がある。それを検証している」という。

また、VRメガネを装着しプレーする際に、脳に微弱の電気刺激を与えるゲームもある。このゲームを通じた実験で、電気刺激を与えることで、ゲームの習得度を加速させることが分かった。では電気刺激が習熟度を上げることができるのか、効果が持続するのか、などを引き続き実験しているという。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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