コラム

AIクラウドの覇者が史上最大の企業になる!?

2018年04月06日(金)13時30分

確かに便利なのだが、果たしてAIクラウドは、そこまで大きな市場になるのだろうか。

先手必勝、三つ巴の戦いへ

MIT Technology ReviewのPeter Burrows氏によると、機械学習を商用利用するために必要な使い勝手のいいツールやフレームワークをクラウド上に搭載したところが大きな収益を手にするだろうと予測している。

AIクラウドの市場規模は現状では推計が難しいが、GoogleのクラウドAIユニットのRajen Sheth氏によると、現在のクラウドの市場は2600億ドル程度だが、AI機能が搭載されることで市場規模はすぐに2倍程度に膨れ上がるだろうとしている。

しかも機械学習はデータを次々と追加して学習させていく必要があるので、一度1つのクラウドを利用し始めると、他社のクラウドには移行しづらい傾向がある。先手必勝となるわけで、ニューヨーク大学経営大学院のArun Sundararajan氏は、「この戦いの勝者は、テック業界の次の時代のOSを手にすることになる」と指摘。投資銀行Avendus Capital USのPuneet Shivam氏は「AIクラウドのトップ企業は、史上最強の企業になるだろう」と語っている。(MIT Technology Review)

史上最強の企業を目指してしのぎを削っているのが、Google、Amazon、Microsoftの3社だ。

3社のうちで最初に開発者向けツールを提供したのがGoogle。2015年にオープンソースのフレームワークTensorFlowを開発者向けに公開した。

しかしAmazon、Microsoftも黙ってはいない。両社とも独自の開発環境を公開したほか、2017年にはAmazon、MicrosoftがオープンソースのインターフェースGluonを共同で開発。TensorFlowを使っても使わなくても、機械学習を簡単に実装できる仕組みを公開した。

3社ともより簡単なツールの開発を急いでおり、Amazonは、ウェブサイトをデザインする程度のスキルで機械学習アプリを開発できるSageMakerというツールを発表。その直後にGoogleが、Cloud AutoMLを発表した。

Googleによると、既に1万3000社以上がCloud AutoMLのアルファ版の試用に申し込んできたという。GoogleのJeff Dean氏によると、機械学習に適した事業を持っている企業は世界で2000万社存在し、うち1000万社が使えるまでにツールを簡単にするのが目標だとしている。(MIT Technology Review)

企業との付き合いのあるMicrosoft、技術志向のGoogle、先行するAmazon

ではこの3社のうち、どこが一番有望なのだろうか。

実はMicrosoftは20年も前からAIの研究に取り組んでおり、画像認識や音声認識の領域では世界のトップレベル。検索エンジンのBing、LinkedIn、Skypeのデータもあるし、何よりOfficeのユーザーは10億人以上。企業との長年の付き合いもある。またSatya Nadella氏が新しく社長になってからは、「AIファースト」をスローガンに挙げ、AI化をものすごい勢いで推進している。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story