コラム

「文明を与えてくれた中国」への忖度が日本にもたらす悪夢

2021年04月13日(火)18時00分

反省が日本的な美徳なら、私もとやかく指摘するつもりはない。ただ、事実は違うとだけ言いたい。漢字や漢籍を輸入して使ってきたとしても、中国とは読み方も解釈も異なる。

それは、ウイグル人やペルシャ人がアラビア文字を借用しているのと同じだ。彼らは誰も「アラブ人は文化を伝えてくれた恩人だ」とは思っていない。同じ漢字を使っても、日本と中国の間には大きな距離がある。日中関係を「一衣帯水」と評するのも政治的なスローガンにすぎない。

問題は中国に対する片思いが、人権や民主主義を基本とする世界の主流から日本を遠ざけようとしていることだ。「日本は文明史的に中国の一部だから肝心な時に裏切る」と、欧米の識者たちが潜在的に持つ見方が再び強まる可能性がある。

媚中派の日本人は、尖閣諸島の防衛ではアメリカの若者に戦ってもらい、自分たちは日中友好の旗を振りたいというムシの良い夢を脳裏に描いているようだ。だが、やがてそれが国家の悪夢になる危険性を予見しなければならないだろう。

ニューズウィーク日本版 ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月24号(2月17日発売)は「ウクライナ戦争4年 苦境のロシア」特集。帰還兵の暴力、止まらないインフレ。国民は疲弊し、プーチンの足元も揺らぐ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英1月小売売上高、前月比+1.8% 24年5月以来

ビジネス

ゴールドマン、中銀の金購入鈍化「一時的」と予想

ワールド

韓国・尹前大統領が非常戒厳を謝罪、判決は報復と批判

ワールド

フィリピン、南シナ海巡り中国と「対話ルート維持」 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 6
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 7
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 8
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story