コラム

次期ダライ・ラマに高まる関心 「15世」候補者は世界で探せ

2017年09月16日(土)12時30分

アメリカでも人気のダライ・ラマ14世(カリフォルニア) Mike Blake-REUTERS

<現在のダライ・ラマ14世の健康不安でささやかれる転生の行方。有力候補はバロン君、それともメイドイン中国か?>

米シアトルのアメリカ人夫妻の元にある日、チベット仏教の僧侶が訪ねてくる。夫妻の息子が高僧の転生だと告げられ、クリスチャンとして疑問を抱きながらブータンにあるチベット仏教の寺院にわが子を連れて行く。夫妻は少年僧に囲まれて楽しそうなわが子を見て、人種や宗教差別を乗り越えようとする僧侶たちの真意に気付く......。

ベルナルド・ベルトルッチ監督の映画『リトル・ブッダ』は、上映を禁止した中国以外では世界的にブームとなった異色作だ。

いまチベット高原を挟んで、チベット亡命政府のあるインド北部ダラムサラと北京との間で、『リトル・ブッダ』よりも熾烈な駆け引きが行われている。チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の健康状態が注視されるようになったからだ。82歳と高齢の法王は、8月中旬にはアフリカのボツワナ訪問を静養を理由にキャンセル。膀胱癌の再発を懸念する報道もある。

不謹慎だが15世はどこで生まれ変わるか――。チベットや中国、仏教に関心を持つ識者の共通の関心事となっている。今や芸能界と政財界で多くの熱心なチベット仏教徒を有するアメリカも例外ではない。

あるアメリカ人政治学者は今春、「トランプ米大統領の御曹司、11歳のバロン君が15世に最適」と私に語ったことがある。そうなれば、アメリカのチベットへの関心は高まり、中国による不法侵略と占拠の問題も解決できるから、というわけだ。

「モンゴルで生まれ変わる可能性も十分にある」と、モンゴルの首都ウランバートル在住の高僧は私に何回も語ったことがある。ダライ・ラマ自身もモンゴルに来るたびに、チベットとの歴史的な縁を強調する。「海のごとき師」を意味するダライ・ラマの称号は16世紀にチンギス・ハンの直系子孫から与えられたもので、ダライ・ラマ4世もモンゴル人だった。

【参考記事】焼身しか策がないチベット人の悲劇

賢そうな子供をリストに

チベットもモンゴルも後に満州人に征服されたが、20世紀初めに清朝が崩壊すると、自立したばかりのモンゴルは真っ先にチベットの独立宣言を歓迎するなど、対中国で常に共同戦線を張ってきた。そのモンゴルは100年以上たった現在、随分軟弱になった。仮にモンゴルから次の法王が誕生したら、中国は軍隊を派遣するのではないか、とモンゴルの政治家は危惧する。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 4
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 7
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 10
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 7
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story