コラム

どれほど「時間管理術」を学んでも、長時間労働がなくならない理由

2018年10月29日(月)13時30分

それではどんなアシスタントが必要なのか議論しようじゃないか、どんな情報システムを導入したら業務がもっと効率化するのか話し合おうじゃないかと、また会議やミーティングを増やしたとします。

そして実際に業務システムが刷新され、説明会が開かれたのだけれども、そのシステムをどう利用すればいいかわからないという声が多数上がったため、システム利用のためのマニュアルを整備しようという話が持ち上がり、そのマニュアル作りをあなたが受け持ったとします。

あなたは「時間管理術」をうまく活用しながら、効率よくマニュアル作りをやりました。しかし、当然のことながら、あなたの、そして組織全体の総労働時間はたいして減っていません。

なぜなら、「手段の目的化」を延々と続けるような職場が、真の「生産性向上」を実現させられる文化を持っているはずがないからです。

素人集団の考え方

そもそも本当に生産性の高い企業なら、コスト削減プロジェクトを素人集団が集まってやろうなどとは考えません。まず、出発時点の意思決定が間違っています。「お金で時間を買う」という言葉があるとおり、餅は餅屋に任せることが生産性を上げるうえでの鉄則です。つまり外部のプロを雇うことが一番理にかなっているのです。

ブルーカラーの生産性は上がるのに、ホワイトカラーの生産性がますます悪化している最大の要因はここにあります。高度情報化時代となり、いろいろな情報、ノウハウが手に入るため、ホワイトカラーの人たちは自分たちでちょっと工夫すればそれができると信じて実行しようとするクセがついてしまいました。

小手先の時間術で、長時間労働が是正されることなどありません。仕事のやり方ではなく「あり方」が問われているのです。専門でもない人が、見よう見まねで不必要な仕事をしている限り、その仕事をどれぐらい短い時間で処理したとしても、本当に豊かな時間は手に入らないものです。

物があふれる時代です。そして同時に、ノウハウもあふれる時代です。物を集めれば集めるほど、ノウハウを集めれば集めるほど、ノイジーな時間を過ごす率が高くなり、本質を見抜く力が落ちていきます。

「使う人」の仕事のやり方を問う

「時間管理術」はとても重要な仕事術。工場で働いているわけではないホワイトカラーにとっては、この自己マネジメント術を知っているかどうかで仕事の生産性は変わってくることでしょう。

ただ、毎日21時、22時まで働いている人が、18時、19時ぐらいまでに仕事を終えられるテクニックかというと、そうではありません。「時間管理術」の考え方だと、1時間の仕事が45分で終えられるようになったり、30分かかる作業が15分で処理できるようになる程度の話です。

これを組み合わせることによって、10時間かかることが、7時間で終わりそうな気もするかもしれませんが、それは「机上の空論」です。

プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story