England Swings!
暗い冬はSADなランプでハッピーに
SADの治療は他のうつ症状と同じように薬物や心理療法でも行われる。けれど特徴的なのは、「ビタミンDの摂取」と「光療法」だ。
「ビタミンDの摂取」では文字通り、ビタミンDを積極的に摂る。食べものから摂るほか、日光を浴びることでも作られるビタミンDは冬には不足しがちで、放っておくと筋肉痛や骨の痛みを引き起こす。だからサプリで補うことが必要だ。この方法はSADの予防策としても暮らしになじんでいて、寒くなってくると、「そろそろビタミンD飲まないとね」なんていう会話が始まる。
もうひとつの「光療法」は、光を浴びて体内時計をリセットするものだ。太陽が出ている時間に外に出ることも勧められるけれど、冬は天気があまりよくないし、そもそも日が短いので限りがある(ただし曇りでも外に出ないよりずっとよいそうだ)。そこで人工の光を浴びるという方法が登場する。
症状によって異なるけれど、1万ルクスの光を1日30分から1、2時間浴びるのが基本だ。いきなり1万ルクスと言われてさっぱり見当がつかなかったけれど、英国の家庭の照明の約10倍にあたるというから、かなりの明るさなのだろう。手元がじゅうぶん明るく手芸ができるくらい、という説明がわかりやすかった。
SADの光療法は毎日コツコツ行なう必要があるので、NHS(無料で受けられる国民健康サービス)でも自宅で行う。だから医師の診断を受けずにライトを自主的に買って光療法を始める人も多いようだ。SADランプと呼ばれる治療用のライトは誰でも買うことができるけれど、光に敏感な人や一定の皮膚炎のある人は悪影響が生じうるので、事前に医師に相談したほうがよい。また診断書があると、SADランプの購入する時の付加価値税(日本の消費税のようなもの)が免除される製品もある。
わたしの場合、もしSADだとしても医師に相談するほど深刻とは思えなかった。ただ朝起きられないことはわたしなりに困っていたので、少し前からネット広告でちらちら見ていたSADランプを試してみることにした。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile