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ラッシャー貴子|イギリス

ロンドンに暮らす色鮮やかな野生のインコ、パラキート

明るい黄緑色の野生のインコは、周りに比べてぐっと派手で、ロンドンではとても目立つ。北国の自然にはあまり見ない色だ。ロンドンで野生のインコに出会うという意外性もあって、インコを見ると心がはずむ。(写真shutterstock.com_Guy_William)

 わが家の食卓は窓辺にある。ぼんやり座っていると、窓の外を突然、派手な黄緑色の群れがびゅんと勢い飛んでいくことがあって、はっとする。キーキーとけたたましく鳴きながら通り過ぎていくのは、野生のインコだ。

 インコは暖かい国にいるイメージだけれど、英国にも推定3万羽(2021年11月のナショナル・ジオグラフィック誌の記事より)の野生のインコが生息していて、南部だけでなく北のスコットランドでも存在が確認されている。その中心はワカケホンセイインコという種類で、オスの首に輪のような模様があるので英語ではringneck parakeetという名前がついている。どちらの名前も少し長いので、ここでは英国で一般に通っている「パラキート」と呼ぶことにする。

 パラキートは、わが家のような郊外だけでなく、ロンドンの中心部でも見ることができる。ハイドパークの近くに住む知り合いは、庭のバードフィーダー(野鳥の餌台)に毎日のようにパラキートの群れが集まってにぎやかだとよく笑っている。

 まずは何より、ロンドン市内でのパラキートの様子をご覧ください。

ロンドンのトレンドや話題のスポットを紹介する情報サイト、LondonistYouTube投稿より、市内の公園で人の手からりんごを食べるパラキートたち。2018年のこの動画は、当時のパラキートの名所だったケンジントン・ガーデンズ(本文参照)で撮影されたものだ。

 数年前まで、ハイドパークのすぐ隣のケンジントン・ガーデンズにはパラキート好きが集まる名所があった。野生のパラキートも、ここは安全で食べものがもらえると学んでいたようで、人の手からリンゴやナッツを食べ、人の肩や頭に乗って写真を撮らせてくれた。その場にはたいてい、パラキートを何羽も体にとまらせた鳥おじさんがいて、主のような顔で周りを見守っていた。

 何十人も集まった観光客や家族づれの間は、ロンドンの公園で意外にも出会った野生のインコとに親しめたことでほのぼのした一体感のようなものが生まれていて見るからに楽しそうだったけれど、人気が出過ぎたせいか、周りの草木が人の足で踏み荒らされたので、今ではその場所には木のフェンスがめぐらされてしまった。

 それでも、北国ロンドンの公園で色鮮やかな鳥が目に入ったら、やっぱり驚いて嬉しくなってしまうというものだ。今でも観光客が多い公園内のあちこちでちょっとしたパラキート集会が自然発生している。

 でもパラキートの原産は南アジアやアフリカだ。それなのに、どうしてロンドンで野生化しているのだろう。

 これについてはさまざまな説がある。そのひとつは、伝説のロックギタリスト、ジミ・ヘンドリックスが1968年に街なかで鳥かごから放った2羽のパラキートが野生化したというものだ。場所は数年後にパンクファッションの聖地になったカーナビー・ストリートで、鳥の名前はアダムとイヴだったと聞くと、何やらミステリアスにフリーダムな感じがして、信じたくなる。

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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