England Swings!
英国で初めてのプラチナ・ ジュビリーにわいた4連休
会場にはユニオンジャックの旗や、女王のほぼ等身大の写真が飾られて、主催者のうちのふたりは、どこからか王冠やマントを調達して即席キングと即席クイーンになってワインを注いで回っていた。注ぐ方も注がれる方も役柄になりきって楽しそうだった。いつものご近所トークに加えて、この日はエリザベス女王やロイヤルファミリーの話題もずいぶん出ていた。した。実際に女王に会ったことがあるご近所さんが2人いて、女王はさまざまな事情をすべて把握して人に会うようだ、とか、昨年亡くなったフィリップ殿下は人の顔やどこで会ったかをよく覚えている人だった、なんていう貴重な話を聞くことができた。
ストリート・パーティーは連休最終日に多いと聞いたので、夕方の散歩で少し遠回りをしてみたら、ほぼ誰でも参加できる大きな集まりから、ほんの数軒だけの小さな集まりまで、わが家の近所だけでもかなりの数の集まりがあった。場所によっては100メートルと開けずに別のパーティーがあったほどで、中にはバンドの生演奏、ゲームやクイズ、スピーチなどの凝った企画をした集まりもあった。チャールズ皇太子とカミラ夫人は、ロンドンのクリケット場で開かれた大きなストリート・パーティーを訪れて、地元の人と交流していた。
体調を考えて欠席した祝賀行事もあったけれど、女王は最終日の大パレードの後には宮殿のバルコニーにしっかり顔を見せて4連休のお祝い週末を締めくくった。70歳以下の人にとって、エリザベス女王は「生まれた時からずっと女王」で、親しみも深い。プラチナ・ジュビリーの盛り上がりには、エリザベス女王の長寿のお祝いやコロナ禍を抜け出しつつある喜びも加わっているのだろう。
さまざまなお祝いメッセージを聞いていると、女王に感謝を表す人が多いことにも気が付く。エリザベス女王は即位の時に誓った通り、常に国を最優先に考えてきた、とはよく言われることだ。それに対する尊敬と感謝なのだろう。王室の今後についてはいろいろな噂や意見があるけれど、歴史的な背景やお人柄を含めて、今のエリザベス女王の後は、王室のあり方や人々の受け入れ方が変わっていくだろう。
プラチナ・ジュビリーを祝って、ロンドン市内に8台だけ走っていた2階建バス。わたしはジュビリーの週末の1週間前に見かけたのだけれど、やっぱり「ラッキー!」と嬉しくなった。こんな些細なこともお祝いムードに影響があったのではないかと感じる。筆者撮影
今日の1冊
エリザベス女王と聞いて真っ先に思い出す本は、英国の劇作家アラン・ベネットが書いた『やんごとなき読者』(市川恵里訳、白水社)だ。上質なユーモアをたっぷり交えて、エリザベス女王がいきいきとチャーミングに描かれている。これを読んだら誰でも女王が好きになってしまうんじゃないかと思うほどだ。プラチナ・ジュビリーを機会に国内でもあちこちで取り上げられて、ペーパーバック(日本でいう文庫版)は表紙を何色か違う色で刷り直して売り出すほど力を入れていた。プラチナ・ジュビリーでエリザベス女王に興味を持たれた方、イギリス好きな方、あるいは本好きな方にぜひおすすめしたい。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile