Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
オーストラリアで最も住みやすい都市に選ばれたアデレードの持続可能な都市づくり
3.各種ゴミの削減とリサイクル
南オーストラリア州政府は、2004年から『Zero Waste SA』と呼ばれる「廃棄物ゼロ」のリサイクル戦略を採用。2011年までに約80%のリサイクル率を達成、430万トンの廃棄物を埋め立てからリサイクルへと転換してきた。(参照)
これは、一人当たり換算でオーストラリア国内最高のリサイクル率であり、100万トン以上の二酸化炭素が大気中に放出されるのを防いだと試算されている。また、再利用できないプラスチック・バッグ(レジ袋)を禁止してきたことで、年間約4億枚がゴミにならずに済んでいるという。
瓶や缶などのリサイクルを始め、さまざまな不用品のリサイクルにも熱心だ。アデレード一の繁華街といえる「ランドル・モール」にも、服や靴、バッグなどのリサイクル・ステーションが設置され、市民のリサイクル意識の高さをうかがわせる。
この『Zero Waste SA』の取り組みは、2010年、国連ハビタットの「Solid Waste Management in the World Cities(世界の都市における固形廃棄物管理)」で表彰された。(参照)
4.都市の緑化と光害対策
アデレードは、2003年に「グリーン・シティ」を目標に掲げ、2014年までに都市圏の300の公園や空き地などに300万本の在来種の植物を植える計画を発表。(参照)
このプロジェクトによって、都市の景観だけでなく、都市部の冷却化、大気と水質の改善、温室効果ガス排出量削減。さらに、在来種の野生生物たちの生息地を作り出し、種の保全にも貢献するという、地域の生物多様性にも着目してきた。
アデレード中心部南側に隣接する土地は、その昔、ほとんどすべての木が伐採された牧草地だったというが、現在は、在来植物が並ぶ森林部分が増え、子供たちが自然の中で遊べるスペースのある公園や庭園など、公共の場となっている。
また、アデレード大学は、緑地の増加によって都市部で問題になっている『光害』も減り、人間の健康にとっても好影響であるという研究結果を発表。(参照)
この研究結果は、アデレードが「健康に暮らすための持続可能な都市」を達成するために行ってきた、グリーン・シティ計画が正しかったことを裏付ける形となった。
些細な日常のなかで、できることから始めようと、市民らが率先して、環境に配慮した持続可能な生活を意識しながら行動することで、環境にも人にも優しい都市が実現しつつあるアデレード。
2003年頃から始めてきた環境に配慮したさまざまな取り組みが着実に実を結び、多くの人にとって「住みやすい街」になってきているといえそうだ。〈了〉
Special thanks to:Tourism Australia, South Australian Tourism Commission
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/