ぼっちで勉強しているだけでは育たない、人生の幸福度を上げる非認知スキルの伸ばし方
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<コロナによってフィジカルな交流が制限されたことで、子どもが友達と親密に関わる機会は激減しました。対人スキル、忍耐力、協調性といった非認知スキルを育てるために今こそ、集団の習い事に参加させて仲間と交流できる環境を作ってあげることが大切です>
2019年にユニセフ(国連児童基金)とバルサ基金(スペインのプロサッカーチーム)が共同で行った調査で、子どものスポーツ参加は、学習能力、やる気、リーダーシップ、自己肯定感を向上させ、キャリア形成や幸福度にも影響を与えるという報告書を発表しました。
同調査を実施したユニセフのシャルロッテ・ペトリ・ゴルニツカ氏は、「スポーツが子どもの健康や身体成長に影響することは知られていましたが、今回の調査で、スポーツが子どものライフスキルの形成にも強い影響を及ぼす実証データを得ることができました」と述べています。
一人で勉強しているだけでは人間力は育たない
東京成徳大学の夏原隆之准教授 が、小学3年生〜中学3年生を対象に実施した「子どもの非認知スキルの発達とスポーツ活動との関連性」調査で、スポーツ経験のある子どもは「非認知スキル」が、未経験者に比べて高いことが分かりました。また「集団スポーツ」を「長く継続している」子どもほど「非認知スキル」が高い傾向があることもが分かりました。
非認知スキルというのは、自信、自己肯定感、チャレンジ精神、粘り強さ、レジリエンス、コミュニケーション力など、物事を成し遂げたり、新たな技能を習得したり、人間関係を形成していく上で不可欠な力の総称で、「人間力」「EQ」「ソフトスキル」とも呼ばれます。
非認知スキルが注目されてきた背景に、2000年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの研究者ジェームズ・ヘックマン博士の研究があります。これは子どもが身につけた非認知スキルの高さが、将来の学歴、キャリア形成、経済的な安定度、人生の幸福度に関係することを明らかにしたものです。
日本、韓国、中国など儒教の影響が残る国々では、伝統的に認知スキル(偏差値や知能指数など数値で評価できる技能)が重視されてきました。しかし前述の調査で明らかになったように、一人で机に向かって勉強しているだけでは社会で生きていくために必要なスキルの多くが身につかないのです。
認知スキル(IQ)と非認知スキル(EQ)は車の両輪のような関係です。どちらかに偏っても車はまっすぐに進むことができません。両者をバランスよく育てることによって、子どもは知力と人間力を兼ね備えた人材へ成長し、たくましく社会で自立していくことができます。