- HOME
- コラム
- リバタリアン・マインド
- 2022年中間選挙で赤い波はあった、下院の接戦選挙…
2022年中間選挙で赤い波はあった、下院の接戦選挙区に届かなった理由
したがって、上述の通り、共和党の余剰票である約300万票の大半が民主党候補者が出馬すらできない選挙区での大量得票が数字に反映されたものとなっている。一昔前まで特定の選挙区での大量得票の問題は、都市部に支持者が人口集中する民主党特有の現象であったが、いまや同様の問題が共和党にも起きるようになってしまったのだ。
実際には赤い波(総得票数増加)は存在していたが、その波が狙った接戦選挙区に届かない構造になっていたというのが選挙戦の実態であった。
トランプ系候補者らの質の低さが主因
さらに、接戦選挙区に赤い波を届けるためには、トランプ前大統領という巨大な防波堤も深刻な問題となっていた。
まず、上院接戦州での敗北は予備選挙を勝ち抜いたトランプ系候補者らの質の低さが主因だ。ペンシルべニア州も含めて本来は勝算があった接戦州で、共和党は候補者選択で自滅的な選択肢を採用してしまった。
トランプ前大統領は元々選挙に強い政治家ではない。2016年の大統領選挙では共和党内での予備選挙候補者濫立及び大統領本選は極めて不人気であったヒラリーとの戦いという構図に恵まれた。しかし、2018年の連邦議会中間選挙では実質的に惨敗し、2020年にはバイデンという弱い候補者に現職大統領として敗北した。
トランプ前大統領の選挙に弱いトラックレコードは、2022年の連邦議会下院議員選挙にも引き継がれており、トランプが支持した候補者はそれ以外の候補者と比べて総じて期待した成果を上げることはなかった。特に過半数奪取を左右する重要選挙区でのパフォーマンスは残念なものであった。(トランプ・非トランプ候補者の選挙パフォーマンスの比較はAEIの分析が極めて秀逸である。)
つまり、トランプ前大統領が選挙戦最終盤に選挙構図をバイデン vs トランプに演出したことよって、多くの重要選挙区では民主党に対する神風が吹き始め、赤い波が岸に到達することを妨げたと言えよう。
以上の通り、2022年連邦議会中間選挙の総括は、「赤い波は存在していた。ただし、選挙区見直しとトランプ前大統領の負の影響で重要選挙区には届かなかった。」とすることが正しい分析と言えるだろう。
今後、米国の共和党関係者で選挙に関わる人々の間では同様の見解が共通認識となっていくことが予想される。2024年大統領選挙・連邦議会議員選挙に向けた共和党の戦略は大きく修正が図られていくことになる。
日本のサイバーセキュリティが危ない!時代に逆行した法案が導入検討されている 2024.03.19
トランプ新政権の外交安全保障を「正しく予測」する方法 2024.02.26
サウジアラビア人社長の日本愛が創る「日本の中東ソフトパワー」 2024.02.16
ウクライナに対する復興支援に日本の納税者の納得はあるのか 2024.02.02
独走するトランプ前大統領の再登板に死角はあるのか 2024.01.29
日本は喫煙に関するよりマシな選択肢を得ようとする欧州諸国を見習うべきだ 2023.12.11
日本政府のスマホアプリ規制、欧州のマネして拙速なリスクを取る必要があるのか 2023.11.29