コラム

国石「ヒスイ」が生まれる東西日本の境界を歩く

2021年09月17日(金)16時20分

◆東西日本の境界線

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限界集落の廃墟

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シェルティが店番するヒスイを売る土産物店

ヒスイ峡を後にして、いよいよ里に下る。途中、また一つ限界集落があった。こちらには崩れかけた廃墟もあり、峠の手前のあった"静寂の村"よりもさらに寂寞感が強い。世界的に貴重な名所の直近の村がこうも衰退している現実を目の当たりにすると、コロナ前の「インバウンド」に湧いた世相とはなんだったのかと首を捻らざるを得ない。ヒスイ峡周辺で人の気配を感じたのは、国道に合流する手前の集落の郵便局と山菜加工場、そして、人懐こいシェルティ(シェットランド・シープドッグ)がいるヒスイを売る個人商店くらいであった。

国道に出ると道は平坦になり、これまでの山岳風景に代わって米どころ・新潟らしい田園風景が広がった。しばらく進むと、姫川の支流の根知川沿いに、フォッサマグナ西端の「糸魚川―静岡構造線」の断層を見ることができる「フォッサマグナパーク」がある。フォッサマグナを視覚的なイメージとして捉えることができる野外展示である。それは即ち、東日本が乗っている北アメリカプレートと、西日本のユーラシアプレートの境界線である。東日本と西日本の境界だとも言える。

フォッサマグナパークに至る遊歩道には、東西日本の文化の違いをクイズ形式で伝える看板がいくつか立っていた。曰く、「西日本の灯油缶は青色。東日本は?(答え・赤)」「西日本は昆布出汁。東日本は?(答え・鰹出汁)」「西日本では、おむすび。東日本は?(答え・おにぎり)」などなど。こうした文化的な違いが、地質的な境界に即しているのが興味深い。地球の営みと人間の営みはどこかでリンクしているのだろうか。

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フォッサマグナパークの野外展示。向かって右の赤っぽい地層が東日本、左の白っぽい地層が西日本

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ユーラシアプレートと北アメリカプレートの境界付近の光景。手前は根知川にかかる大糸線の鉄橋

◆最終回へとつなぐ無人駅へ

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国道から港の方向を望む

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国道沿いにはヒスイの原石を売る店も

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ヒスイの国石指定を伝えるポスター

フォッサマグナパークを後にした時には夕方の4時を回っていた。朝7時前にスタートして、歩行距離は過去最高の28kmに迫っていた。もう一息体力と気力を振り絞り、フォッサマグナ・ミュージアム手前の大糸線・頸城大野(くびきおおの)駅を目指して国道を進んだ。ヒスイの加工場や販売店がある一角を過ぎると、現代の地域産業を代表する港のセメント工場のシルエットが河口方向に見えた。

頸城大野は、田畑と里山に囲まれた小さな無人駅だった。次回はいよいよ最終回。ヒスイ海岸を目指して糸魚川市街を歩く。

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ゴールの頸城大野駅

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今回歩いたコース:YAMAP活動日記

今回の行程: 平岩駅 → 頸城大野駅(https://yamap.com/activities/12647587)※リンク先に沿道で撮影した全写真・詳細地図あり
・歩行距離=28.4km
・歩行時間=10時間48分
・上り/下り=1021m/1237m

プロフィール

内村コースケ

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。外交官だった父の転勤で少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験。かねてから希望していたカメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、海外ニュース、帰国子女教育、地方移住、ペット・動物愛護問題などをテーマに執筆・撮影活動をしている。日本写真家協会(JPS)会員

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