コラム

日本よ、留学生を「優遇」する国であり続けて

2023年03月27日(月)18時40分
周 来友(しゅう・らいゆう)(経営者、ジャーナリスト)

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高田馬場駅のプラットフォームから見える中国人向け予備校の看板 YUSUKE MORITA-NEWSWEEK JAPAN


似たような制度は中国にもあり、中国政府は近年、一部の外国人留学生を手厚くサポートしているようだが、その背景には国連で自国に有利な票を得たいという思惑もある。

例えば山東省のある大学は、アフリカや中東出身の男子留学生に、1人当たり3人もの女子学生チューターを付ける「制度」を導入していた(ある留学生が複数の女子学生を妊娠させたことをきっかけに、「制度」の存在が明らかになった)。

打算的と言えばそれまでだが、留学生を通じて友好国を増やすことは国の重要な長期的戦略といえるだろう。

かつての日本にはそうした長期的視野を持つ人が少なくなかった。

19世紀末、日本に亡命した孫文も日本人から活動費や生活費の支援を受け、日本人と結婚し(中国に妻がいたのに!)、さらには日本人の愛人まで囲っていた。

女性の話はともかくとして......あの当時の日本人には、例えばインドやビルマ(当時)など、将来その国の指導者になると見込んだ人物の面倒を見る覚悟があったのだ。しかし、今の日本にはそうしたビジョンや気概が感じられない。

果たしてそれでいいのだろうか。留学生を優遇する諸制度を十把一からげに廃止すれば、各国の知日派、親日派は将来確実に減っていく。それは決して日本の国益にはならないはずだ。

だからせめて留学生への優遇制度は残し、日本は外国の若者を歓迎しているのだという姿勢ぐらいは今後も示し続けてもらいたい。

たとえ、経済水準を考慮に入れ、中国人を制度の対象から外すことになるとしても――。

Zhou_Profile.jpg周 来友
ZHOU LAIYOU
1963年中国浙江省生まれ。87年に来日し、日本で大学院修了。通訳・翻訳の派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレント、YouTuber(番組名「周来友の人生相談バカ一代」)としても活動。

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