右派と左派と憲法、原爆と反米感情......中国人から見た日米関係の不思議
中国人から見ると日米の強固な同盟関係は不思議だ KIM KYUNG HOON-REUTERS
<反米的な感情は右派にも左派にもほとんど見られない。日本を味方に引き込めると考える中国の政治家や国民がいるが、そんなことは絶対に無理だ>
このコラムが読者の目に入る頃、アメリカでは大統領選の投票が行われ、開票が進んでいるだろう。選挙経験が一度もない私が結果を予想したところで、外すのは目に見えている。恥をかくので、ここでの予想は控えたい。
ただ、9月と10月、私の会社の現地スタッフが世界最大の日用品市場がある中国浙江省義烏市で取材をしたときは、選挙グッズの出荷数はトランプ陣営が上回っていた。この「義烏指数」で占う米大統領選の的中率はかなり高いとされている。そう考えると分が悪いのはバイデン氏だが、果たしてどんな結果になることやら。
こんなふうに日本で米大統領選の行方を見守るのも今回で9回目だが、アメリカと日本の関係についてはいまだに分からないことが多い。そんなわけで今回、大統領選を機に、日米の不思議な関係性について考えてみたい。
私にとって最大の謎は、なんといっても戦争で敵国同士だった日米両国がいかにして今の関係に至ったかということだ。
第2次大戦当時アメリカの同盟国だった中国では、アメリカが原爆を落とさなければ戦争がさらに長引き、中国人の死者もさらに増えていた、と教えられる。アメリカの主張する「原爆投下の理屈」そのものだ。しかし広島の平和記念資料館に行けば、原爆がいかにアンフェアで、非人道的だったか分かる。私は中国人研修生の引率を含め、10回以上資料館を訪れているが、当時の写真や資料を見て何度も涙を流したし、犠牲者の無念さを思って胸を締め付けられた。
だからこそずっと不思議だったのは、アメリカに対する日本人の心情だ。「一矢報いてやろう」という気持ちが皆無なだけでなく、時に「アメリカの犬」などと言われても反発する様子すらない。不勉強で恐縮だが、本当の保守派は反共と同時に反米だとも聞いた。だが右派にも左派にも今、反米的な感情はほとんど見られない。
私の中でこの謎はまだはっきりとは解明されていないが、日本で長く暮らし、両国の強固な同盟関係が続くことが日本の国益になることは分かってきた。相手が中国であれば、「明日にでも攻めてきて、日本を植民地にしかねない、理不尽で厄介な国」というイメージがあるかもしれないが、アメリカに対してはそれがない。原爆を落とされて負けても、沖縄を除く本土は植民地にならなかった。そのため本土の日本人には、アメリカにひどい目に遭わされることは想像しづらいのだろう。それどころか、今の日本があるのはアメリカのおかげと考える国民も少なくないようだ。