コラム

日本の政治家は子供のことを考えている? 一斉休校が家庭に与えた深刻な影響

2020年08月21日(金)17時20分
西村カリン(ジャーナリスト)

悩んだ親は多いだろうし、先生にとっても極めて大変な時期だったはず(*写真はイメージで本文の内容とは関係ありません) KIM KYUNG HOON-REUTERS

<3カ月半の休校の間に、子供の生活リズム、宿題のやる気、家でのルールなどが全部めちゃくちゃに...>

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)は全世界にショックを与えたが、どう対応すべきか「正解」が誰にも分からず、国によって対策はさまざまだった。日本は3月初めから、世界で初めて小中高の一斉休校を実施。当時、1日の新規感染者は全国で50人以下で、休校すれば学校での感染拡大を防げるという考え方だった。

4月7日に発令された緊急事態宣言の後に感染状況は大幅に改善した。しかし、6月末以降は再び感染拡大が進んでいる。

現在、1日の新規感染者は1000人を超える日も多く、一斉休校が決定された頃の20倍前後になっている。それでも政府は、今の新規感染者は20代と30代が約7割を占めるので前回の波とは違い、緊急事態宣言や休校は不要だと説明する。保育園児や小学生の親の世代を中心にウイルスが広がっているのに、休校は必要ないと言う。あまりにも分かりづらいロジックだと思う。

一斉休校が必要かどうかは政治的な理由で判断するのではなく、科学的根拠に基づいて決めるべきだった。4月1日に専門家会議は、子供は新型コロナウイルスの「感染拡大の役割をほとんど果たしてはいない」との見方を明らかにした。だがその後は全く議論がなく、5月下旬に緊急事態宣言が解除されたときから、ようやく学校再開の話が始まった。一斉休校が感染拡大の防止に効果があった、またはなかったとする両方の研究はあるものの、幅広い議論はなされていない。

確実なのは、休校が子供や家庭に深刻な影響を与えたということだ。

うちの子が通う小学校は6月中旬から、やっと本格的に再開した。3月2日から6月中旬まで3カ月半の休校の間に、生活のリズム、宿題のやる気、家でのルールなどが全部めちゃくちゃになった。例えば、それまで学校のある日はゲームとテレビは禁止だったが、学校がない日ばかりになってしまい、親も仕事があったから、テレビとゲームの時間がものすごく増えた。次男はまだ2歳半で、テレビの時間が増えたこともあって睡眠の質が悪くなるなどした。

わが家だけでなく、子供がいる家庭は全て同じだ。共働きの家庭は特に大変だったと思う。親が先生役をするのも1週間ならなんとか頑張れるが、3~4カ月となると無理。仕事をしながらだと、完全に無理だ。誰に相談すればいいか、悩んだ親は多いだろう。学校の先生とのコミュニケーションも難しいとよく感じた。先生たちにとっても極めて大変な時期だったと思う。

【関連記事】頭が痛いコロナ休校、でも親は「先生役」をしなくていい
【関連記事】オンライン化のスピード感に欠ける、東京の「生ぬるい」公教育

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story