コラム

ベルリンはロックダウンによる「文化の死」とどう戦うのか?

2021年01月13日(水)17時10分

アニバーサリー・イベントの挑戦

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770―1827)の生誕250周年は、2021年6月にボンの聴衆の前で野外コンサートとして実施される。当初、2020年に計画された多くのベートーヴェン・プロジェクトは、コロナのためにキャンセル、または延期された。

ドイツ全土でのベートーヴェン年は、2021年9月まで延長され、人工知能が完成させたベートーヴェンの交響曲第10番の公式の世界初演は、2021年秋まで行われない。この交響曲は2020年4月にベートーヴェン・オーケストラ・ボンで初演される予定だった。

コロナの大流行により、計画された300のプロジェクトの一部しか実施できなかったため、記念年は2020年12月からさらに250日延長される。目的は、特にパンデミック関連の制限に苦しんでいるアーティストに、キャンセルされたコンサートやプロジェクトへの参加の機会を与えることだ。

ヨーゼフ・ボイス生誕100周年

さらに2021年の特筆すべきイベントは、ヨーゼフ・ボイス(1921-1986)の生誕100周年を記念する展示会である。20世紀の最も重要な芸術家の一人が、ドイツ西部ノルトライン=ヴェストファーレン州のクレーフェルトで生まれてから今年で100年になる。ボイスは、アートを通して社会を変えることができると確信していた。彼はまた、ドイツ「緑の党」の共同創設者だった。

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「誰もがアーティストであり、また、そうあるべきだ」と説いたヨーゼフ・ボイス、1975年。Foto©Caroline-Tisdall.

コロナの時代に、ボイスは私たちに何を問いかけるか?「私たちは、ボイスを過去の芸術家として見てはいない。彼は、私たちの現在に語りかける人物である」と、「Beuys2021」のアート・ディレクターであるオイゲン・ブルームは述べている。

不屈の説教者として、ボイスの「社会的彫刻」と「誰もがアーティスト」というメッセージが、現在のコロナ危機に再び現れる。ボイスは、20世紀アートにおける最も強力な革新者の1人だった。ボイスはアートの権威的台座を取り払い、市民一人一人がアーティストであり、そうなるべきだと説いた。

ボイスの言説は、誰もが絵画や音楽を創造することではなく、今日的に言えば、人々の積極的な社会参加を促し、社会をより良く「造形」するために、人々の集合知を喚起する理念だった。ボイスは時代の賞賛と拒絶の両極間に立ち、社会的および政治的な力としての、まったく新しいアートの概念を広めた。

ボイスの生まれ故郷だけでも、20の美術館や機関がボイスの複雑な作品とカリスマ性に敬意を表すことになっている。ベルリンでは、6月13日からハンブルガー・バーンホフ美術館で、ボイスの「言語」に焦点をあてた展示会が開催される予定だ。

アートの社会的役割

ベートーヴェンは、アートを司るギリシア神話の女神「ミューズ」を想起し、次の言葉を残している。「アート? 彼女がいなければ私はどうなるのか? それはわからない。しかし、私は恐れている。もしアートが存在しなければ、何百、何千という不測の事態を体験することになるからだ」

文化がコロナ禍で死ぬことはない。なぜなら、文化は明らかにコロナ危機において、私たちを救う「良薬」であるからだ。コロナ危機の時代にあっても、ベルリンでは相次いで刺激的な文化イベントが次々と計画されている。理由は、パンデミックによって浮かび上がった文化の緊急の役割を明確に示すことだ。

ザルツブルク音楽祭の創設者であるフーゴ・フォン・ホフマンスタールは、「意志が目覚めたら、何かがほぼ達成されている」と述べた。ベルリンは、道を開く意志を確認するだけだ。同時にそれは、アートの権威性から自由になること、私たちが必要とするアートとは何かを、私たち自身が問いかけることから始まっていく。

プロフィール

武邑光裕

メディア美学者、「武邑塾」塾長。Center for the Study of Digital Lifeフェロー。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学、東京大学大学院、札幌市立大学で教授職を歴任。インターネットの黎明期から現代のソーシャルメディア、AIにいたるまで、デジタル社会環境を研究。2013年より武邑塾を主宰。著書『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で、第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。このほか『さよならインターネット GDPRはネットとデータをどう変えるのか』(ダイヤモンド社)、『ベルリン・都市・未来』(太田出版)などがある。新著は『プライバシー・パラドックス データ監視社会と「わたし」の再発明』(黒鳥社)。現在ベルリン在住。

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