関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ海での中国の傍若無人な振る舞いが招いた変化
China's Neighbor Could Buy F-16s in Blow to Xi
背景にあるのは、中国の存在だ。ベトナムにとって、中国は隣接する超大国であり最大の貿易相手国。一方、アメリカは主要貿易相手国であり、東南アジア地域において対中戦略上の重要な位置づけとなる。ベトナムは対米関係と対中関係のバランスを慎重に取り続けてきた。
本誌は、中国外交部と米国防総省に対し、メールでコメントを求めている。
ベトナムと中国の領土紛争は、西沙(パラセル)諸島などの南シナ海の領有権をめぐる対立に端を発する。1974年に両国の海軍が衝突、最終的に中国が当時の南ベトナムから同諸島を奪取した。
2024年3月、両国の間に位置するトンキン湾で中国が一方的に新たな領海基線を設定したことに対し、ベトナム政府はこの措置が既存の合意に違反していると非難、異例の抗議申し入れを行った。
さらに、2024年9月には、ベトナム漁民が西沙諸島近海で中国当局に拿捕され、暴行を受けたとされる事件が発生、同年10月にベトナムは厳しく中国を非難した。中国政府は当局が「抑制的に行動していた」として、抗議を突っぱねている。
中国・南京大学の程漢平(チェン・ハンピン)上級研究員は報告書で、こう分析する。
「第1次トランプ政権では、東南アジアはアメリカの外交政策でさほどフォーカスされていなかった......しかし、近年、米政府は間違いなく対中封じ込め戦略を継続している。中国の隣国を含む関係国との戦略的同盟を構築・強化し、中国の経済発展と国際的影響力を抑制すべく、いくつもの地域的課題に積極的に関与してきた」