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韓国スターバックス、日本を抜いて世界3位に浮上 「非武装地帯スタバ」「会長宅スタバ」など個性化路線で躍進

2025年2月26日(水)20時00分
佐々木和義

STARBUCKS Busan,

釜山の人気スポット海雲台(ヘウンデ)にあるスターバックス松亭(ソンジョン)ビーチ店


ロッテ系のカフェに店舗開発で出し抜かれ......

日本は1号店開店4年後の2000年に200店舗、7年で500店舗に達したが、韓国では200号店は開業から8年経った2007年、500号店は13年後の2012年だった。ソウルで一般的な喫茶店のコーヒー1杯が2000ウォンだった2000年当時、スターバックスのカフェ・アメリカーノは3000ウォン。会社員のランチが3000ウォン台の時代である。

世界のスタバの中でも特に高単価といわれながらも好立地への出店に加えて、早い段階からコンセントと無料Wi-Fiを設置した韓国スタバは、ノートパソコンを持ち込むビジネス客や学生を中心に人気となり、利益が大きいとみた競合店の市場参入が相次いだ。

最大の競合はロッテグループのエンジェル・イン・アスだった。スターバックスは新店舗を開発する際、流動人口など慎重に調査を進めたが、スターバックスが調査に着手したという情報を得たエンジェル・イン・アスが不動産オーナーに接触、先手を打って契約する例が相次いだ。スターバックスの韓国側パートナーであるイーマートとエンジェル・イン・アスを運営するロッテの韓国内におけるブランド力や信頼度は同等で、決定まで時間がかかるスターバックスより即時契約を結ぶエンジェル・イン・アスを選ぶ家主が少なくなかった。韓国スターバックスが500号店に達した2012年、後発のエンジェル・イン・アスは既に600店舗を超えていた。

韓国独自メニューで反転攻勢

500店達成と前後して韓国スターバックスは反転攻勢を開始する。米国本社にはない独自メニューやサイズアップ、コラボアイテムなどを展開した。なかでもストロベリーやマンゴー、済州産抹茶などの韓国独自メニューを開発したのが人気を呼び、特に16年に販売を開始したグレープフルーツハニーブラックティーは昨年、累積販売数1億杯を記録した。

原料費の高騰で値上げを余儀なくされた12年と14年には、無料サイズアップキャンペーンを実施したが、なかでも14年のキャンペーンはメディアが取り上げるほど話題となった。また2017年に韓国政府が使い捨てカップの店内利用を禁止すると、いち早くタンブラー持参者への割引きを行っている。

2014年5月には世界初となるアプリを利用した事前予約と決済システムを導入し、同14年8月以降、すべての決済手段で新世界百貨店・イーマートのポイントと連携した。それまでポイント提携は専用カード決済に限られていた。また通信大手のKTと提携し、KTメンバーシップ加入者は等級に応じて割引等を受けられるようになった。

競合各社が一斉に値上げをした2019年6月、韓国スターバックスは値上げを見送り、カフェ・アメリカーノは2021年まで4100ウォンに据え置いた。一方で18年以降の新店舗やリニューアル店は客席内のコンセントを減らし、さらにコンセント設置場所には座り心地がよくない椅子と小さいテーブルを配置するなど回転率の向上を図っていた。

韓国スターバックスが昨年暮れに実施したモレスキンの手帳などがもらえるコラボアイテムのプレゼントキャンペーン。
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