アサド政権崩壊で、もうシリア難民に保護は不要?...強制送還を求める声に各国政府の反応は?

Do Syrian Refugees Still Exist?

2025年1月15日(水)14時17分
アンチャル・ボーラ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

ダマスカスを掌握して軍事パレードを行う暫定政権のメンバー

ダマスカスを掌握して軍事パレードを行う暫定政権のメンバー(昨年12月) AP/AFLO

昨年12月、ドイツ中部のワイマールにあるシリア料理店に、3人のシリア難民がいた。ユスフとモハメド、そしてイッサは口々に、祖国には戻りたいが、一時的に訪問して状況を確認したいだけで再定住するつもりはないと話した。

学生のイッサはシリア東部デリゾールの出身。故郷は今、アメリカが支援するクルド人主体のシリア民主軍(SDF)が実効支配している。彼はトルコが支援するシリア反体制派との緊張状態を懸念し、「まだ安全ではない」とドイツ語で語った。ドイツ北部のメクレンブルクで理容師をしているモハメドは、今後もドイツで暮らしたいと話した。


人権活動家のみるところ、ドイツ在住のシリア人は生活を立て直すために多大な投資を行っているので、いきなり全てを放り出すのは難しい。

ドイツの難民支援団体プロ・アジールで活動する社会学者のカール・コップは、欧州にいるシリア人の大半、特に仕事と収入があって子供を学校に通わせているシリア人はこのままとどまるだろうと言う。「高齢の人たちは祖国に帰って余生を過ごしたいと思うかもしれないが」

高齢化が進む欧州の労働市場の穴を埋めるためにシリア難民が重宝されている今、社会に溶け込んだシリア人を「引き剝がすのは愚かだ」と、コップは言う。ドイツでは介護業界だけでも、20万人近くを確保する必要がある。

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