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「苦しみは比べられない」シリアから逃れてきた若者に日本の同世代はどう見えているのか?

2025年1月10日(金)11時30分
※JICAトピックスより転載

伊藤 JICAでも「支援する側」「される側」ではないというメッセージ、そして「信頼」を大事にしています。同じ言葉が出てきて、びっくりです。

大井 難民も紛争影響地域の若者も、日本の若者も「何もできないかわいそうな人」ではありません。自立する力、社会に貢献する力を持っています。支援や保護は必要ですが、それぞれが持つポテンシャルを発揮できる「エンパワメント」、社会に参画できる支援が重要です。

アナス 持続可能なソリューションの提供も大事です。例えば、食べ物を渡すよりも、お米の作り方を教えることで、自分で食べ物を作れるようになります。このような機会を得ることで、難民は自立することができます。私自身、日本に来る前は「死ぬまでこの状況が続く」と思っていましたが、JISRプログラムのおかげで生活が100%良い方向に変わりました。

世良 自立するためのサポートが必要なんですね。

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伊藤 日本は少なくとも戦争はなく、経済的にも恵まれている国だと思います。それでも、多くの若者が自殺してしまう状況にあります。アナスさんは、日本の若者についてどのように感じていますか。

アナス 人の苦しみは比べられるものではありません。それぞれが抱える問題が異なるからです。私の母国では戦争がありましたが、だからと言って私の問題のほうが大きいとは絶対に思いません。日本にも社会問題やストレスがあり、日本人はとても強いと思いますよ。

世良 大変さを比べないという考え方も、大事な視点ですね。

平和な社会をつくるために 何が必要?

伊藤 では最後に、皆さんに「平和な社会、そして世界を作るために必要なこと」というお題でフリップを書いていただきます。

早川 僕は「半径5mの想像力」です。自分の手の届く範囲よりも1歩踏み込んだ中で、目の前にいる人の背景や、そこで起きていることに対して想像力を巡らせることが大事だと思います。

アナス 私は尊厳と平等。この地球で一番大事なのが、尊厳と平等です。私達は同じ人間で、それぞれが平等な権利を持てば紛争は起きないはずです。そして、相手の尊厳を守れれば問題は起きないと思います。

大井 私は「信頼」です。世界の紛争問題の根底には、信頼の欠如が原因としてあるのではないでしょうか。身近な人たちの中で、そして社会の中で信頼関係を作っていくことで、紛争が起きにくい強い社会をつくることができると思います。

世良 私は「思いやりのある想像力」を挙げたいです。周りで起きていること、周りにいる人の全てを理解するのは難しいかもしれませんが、その人にどんな背景があるのか、興味を持って想像してみることが大事だと思いました。

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フリップを掲げる早川さん、アナスさん、大井室長(左から)

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<関連リンク>
シリアの未来を担う人材育成(シリア難民向け人材育成事業)
ウガンダの難民支援(長期化する難民に人道支援と開発協力の両輪で対応)
ウガンダの難民支援(隣国の兄弟と支え合う)
西アフリカ・サヘル地域の若者を含む紛争影響地域の信頼醸成支援

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