尹錫悦は「何を間違えた」のか?...お粗末すぎた大統領の自作自演クーデター計画を解説

OUR DEMOCRACY IS RESILIENT

2024年12月10日(火)13時51分
ネーサン・パク(米「責任ある外交に関するクインシー研究所」研究員)

建物に入った議員とスタッフたちは入り口にバリケードを築き、午前0時49分に開会が宣言された。議長の禹元植(ウ・ウォンシク)は、全ての法的な手続きを踏み、投票結果に疑問の余地が残らないようにしようと強調した。

その間にも空挺部隊が窓ガラスを割って侵入を試みたが、議会スタッフが消火器や携帯電話のフラッシュで応戦し、どうにか押しとどめた。


国会の手続きにのっとって法案をタイプし、提出するのに12分かかった。しかし午前1時1分、300人の国会議員のうち、なんとか議場に入ることのできた190人が全員一致で戒厳令の解除を決議した。

なかには与党・国民の力に属する議員18人も含まれていた。しばらくためらった後、ヘリコプターと装甲車、そして兵士たちは議事堂を離れ始めた。

しかし、尹大統領が国会決議に従う保証はなかった。だから議員たちは議場にとどまり、尹が再び軍を出動させたり、新たな戒厳令を発したりする事態に備えた。

敗北を認め、屈辱にまみれた尹が記者会見に臨み、戒厳令解除を発表したのは午前4時27分だった。

保守勢力には「恥の上塗り」

現時点では、状況はまだ流動的だ。しかし尹大統領が27年までの任期を務め上げる可能性は低い。野党は尹の即刻辞任を求めたが、応じないとみて弾劾の手続きに入った。

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