最新記事
軍事

「核兵器を除く世界最強の爆弾」 ハルキウ州での「巨大爆発」映像をロシア側が公開、その真偽は

Russia Deploys 'Largest Non-Nuclear Bomb' in Ukraine: Reports

2024年10月5日(土)12時58分
ヒュー・キャメロン
ロシアがウクライナで世界最強の非核兵器を使用か

@insiderUKR/Telegram

<ハルキウ州ボルチャンスクに投下された爆弾は「すべての爆弾の父」と呼ばれる燃料気化爆弾ODAB-9000だったのか? 公開された動画をめぐり議論が起きている>

ロシア軍が、ウクライナの町を攻撃する新たな動画が公開された。親ロシア派の情報筋は、この動画内に映し出されている巨大な爆発を起こしたのは、「核兵器を除く世界最強の爆弾」であり、「すべての爆弾の父」と呼ばれる燃料気化爆弾ODAB-9000だとしている。

■【動画】ロシア軍、「世界最強の非核兵器」を使用か...ハルキウ州での「巨大爆発」動画を公開、ウクライナ側は否定

ウクライナ北東部ハルキウ州の町ボルチャンスクに「真空爆弾」が投下されたという動画が、10月1日朝、ロシアとウクライナ双方のメディアで掲載され始めた。

ウクライナの報道機関インサイダーUAはテレグラムチャンネルにこの動画を投稿し、ロシアの軍事ブロガーの発言を引用する形で、この爆弾はODAB-9000だとしている。このODAB-9000なる爆弾は巨大な滑空爆弾で、「すべての爆弾の父」と呼ばれることもあるという。

動画では、画面右上から爆弾が落下し、すでに荒廃している街で爆発。周辺の建物に被害を与える様子が映し出されている。

一方、親ウクライナ派のテレグラムチャンネルもこの動画を共有しているが、動画の爆弾は別の燃料気化爆弾であり、より強力な爆弾が使用されたという言説は「ラシスト」が広めた嘘だと述べている。「ラシスト」とは、ロシア軍のメンバーや支援者を呼ぶ際のウクライナ側の表現だ。

「真空爆弾」とも呼ばれる燃料気化爆弾は、周囲から酸素を取り込み、激しい高温燃焼を起こす。国際法に焦点を当てた赤十字の学術誌インターナショナル・レビュー・オブ・ザ・レッドクロスによれば、民間人が暮らす市街地で燃料気化爆弾を使用することは戦争犯罪にあたる可能性がある。

「最強の非核兵器ODAB-9000が初めて使われた」は本当か

ロシアの「ミリブロガー(軍事ブロガー)」はこの動画を共有し続け、爆弾はODAB-9000だという主張を繰り返している。あるブロガーはODAB-9000を、「世界最強の非核兵器」と呼んでいる。

別の親ロシア派チャンネルは、この動画を共有したうえで、「ボルチャンスクで素晴らしいものを使う決定が下された。真空爆弾ODAB-9000だ。この戦争で初めての使用だ」と述べている。さらに、ウクライナ人を差別用語で呼びながら、「(彼らのうち)生き残った者はいないだろう」と続けている。

これらの主張に対し、ハルキウ州作戦戦術部隊(OTU)のテレグラムチャンネルが反応した。ハルキウ州OTUのテレグラムチャンネルは、「ロシア占領軍がボルチャンスクで滑空爆弾ODAB-9000を使用したという情報は事実ではない」と述べたうえで、報道官ヴィタリー・サランツェフの声明を引用した。

「この兵器を使用するには、適切な航空機が必要だ。理論的には、戦略爆撃機Tu-160などが考えられるが、そのような航空機の移動は記録されていない」「重量も威力ももっと小さい兵器が使用された。その爆発は、プロパガンダとして、『壮観』な写真をつくるために利用された」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:米大統領選で浮上のチップ非課税案、激戦州

ビジネス

アングル:テスラ運転支援技術、規制すり抜けライドシ

ビジネス

米国株式市場=ダウ最高値、雇用統計受け景気懸念が緩

ワールド

ハリス氏、アラブ系米国人指導者と会談へ 支持回復目
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大谷の偉業
特集:大谷の偉業
2024年10月 8日号(10/ 1発売)

ドジャース地区優勝と初の「50-50」を達成した大谷翔平をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシング、信じられない映像を米軍が公開
  • 3
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待っていたのは......
  • 4
    米軍がウクライナに供与する滑空爆弾「JSOW」はロシ…
  • 5
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 6
    野原の至る所で黒煙...撃退された「大隊規模」のロシ…
  • 7
    羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援…
  • 8
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 9
    オアシス再結成で露わになる搾取...「ダイナミック・…
  • 10
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 3
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する「ロボット犬」を戦場に投入...活動映像を公開
  • 4
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 5
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 6
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 9
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 10
    米軍がウクライナに供与する滑空爆弾「JSOW」はロシ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 4
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 5
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中